数年前までは多かったのに… 近ごろ、連続ドラマの「打ち切り」がなくなった“業界の事情”

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ギャラを全額払った上で詫びる

 並行して水面下ではプロデューサ―のお詫び行脚が始まる。出演陣が所属する芸能プロダクションを回る。ギャラは本来の放送回数分が全額支払われる。それでも謝罪しなくてはならない。

「俳優にとって屈辱ですから。また、打ち切りが露見し、喧伝されたら、その俳優のイメージが損なわれてしまう。今後の仕事に影響しかねない」(同・元民放幹部)

 芸能プロのスタッフがプロデューサ―をなじり、土下座せんばかりに頭を下げなくてはならない場面もあったという。
「打ち切り時の一番の試練は芸能プロへの謝罪」(同・元民放幹部)

 また、ドラマは大抵、複数のスポンサーが提供している。スポンサーの中で「打ち切ってほしい」「続けてほしい」と意見が割れてしまうことはないのだろうか。

「あります。ただ、まず打ち切り派の意見が通る。視聴率が悪いんですから。両者の調整は広告代理店がやってくれる」(同・元民放幹部)

 撮影も放送もしていない分まで出演陣にギャラを払い、穴埋め番組の制作費もあるから、連ドラを打ち切ると、数千万円単位の損害が出る。無論、それは局の負担となる。

 だから打ち切りドラマをつくってしまったプロデューサ―はしばらく肩身の狭い思いを強いられるという。違う業種のサラリーマンと同じである。

 過去には瞬く間に終わってしまった連ドラもあった。例えば1993年の日本テレビ「もうひとつのJリーグ」(主演・榊原利彦)である。11回の予定で始まりながら、全話平均世帯視聴率が5%前後だったため、5回で終わってしまった。

 テーマは同年に発足したJリーグ。ヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ1969)の選手だった永井秀樹氏(51)らも出演し、話題性十分だったが、振るわなかった。

 全く同じ時期、毎日放送(TBS系)でもJリーグの連ドラをやっていた。「オレたちのオーレ!」(主演・大鶴義丹)である。同視聴率はやっぱり5%前後。こちらは11回放送されたものの、本来は2クール(6カ月)の予定だったから、こちらも打ち切りだった。

 1週間に2度もJリーグのドラマを観たい人は少数派に違いない。両ドラマは完全に食い合った。そもそも両ドラマともJリーグを物語にうまく組み込めてなかった。Jリーグを連ドラのテーマにするノウハウがまだ脚本家になかったからではないか。

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