大谷翔平の「呪い」を恐れて球団を“身売り” エ軍オーナー「今がその時」のウラ事情

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大谷去就が最大の懸案

 米球界に激震が走った。エンゼルスは8月23日、球団売却の検討に入ったと発表。20シーズンにわたってエンゼルスを保有するアート・モレノ球団オーナー(76)は、「今がその時との結論に達した」との声明を出した。モレノ氏は広告業で財を成し、2003年シーズン途中、メジャーで初の中南米系オーナーとなり、翌年の専門誌「スポーツ・イラストレイテッド」ではスポーツ界で「最も影響があるマイノリティー」1位に。優れたビジネスセンスで最適な身売りのタイミングが「今」と判断した。その大きな決め手となったのは、他ならぬ大谷翔平(28)の存在だった。【津浦集/スポーツライター】

 エンゼルスは大谷の去就が最大の懸案だった。二刀流で昨季「9勝、46本塁打」でMVPに輝き、今季もベーブ・ルース以来104年ぶりの「2桁勝利、2桁本塁打」でジャッジ(ヤンキース)との一騎打ちでMVPを争っている。今オフで2年契約が切れ、契約延長なら400億円は下らない巨額資金を要すると言われる。単年契約でも、年俸調停の権利を持つ選手としてはレッドソックス時代のベッツ(ドジャース)の史上最高2700万ドル(約30億円、当時のレート)を超える契約が見込まれている。

 エンゼルスは既にトラウト、レンドンと巨額契約を結んでいる。単年、複数年どちらかで大谷と契約したとしても、この3人で1シーズンの予算の大半を占め、山積する補強ポイントに手が回らないのは必定だった。若手が育ってもおらず、来季以降の展望は開けていなかった。

 かといって簡単には大谷のトレードに踏み切れない事情があった。

 1919年オフ、レッドソックスは高額な年俸を要求してきたベーブ・ルースをヤンキースにトレードした。その後、ルースはメジャー史に残るホームランバッターとしてチームを黄金時代に導く。対照的にレッドソックスは03年までワールドシリーズ制覇から遠ざかった。「バンビーノ(ルースの愛称)の呪い」と言われた因縁はあまりに有名で、レッドソックスは愚かな判断をしたと後世まで語り継がれた。

 MLB担当記者がこの逸話を念頭に語る。

「モレノもレッドソックスのことはよく知っているだろう。『現代のルース』と呼ばれ、100年に1人の選手である大谷の取り扱いを誤れば、末代まで汚名を着せられることになる。他球団から若手有望株を複数獲得し、チーム再建の礎とするのはメジャーで常道だが、移籍後の大谷の活躍を考えると、トレードは禁じ手と考えていたのではないか」

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