DeNAと阪神が狙う大逆転V どん底から「奇跡の大攻勢」をかけた歴史的逆襲4選
借金20から大逆襲
次は、返済困難と思われた大借金を完済したチームを紹介する。史上最多の借金「20」から大逆襲を演じたのが、1962年の南海である。
前年のパ・リーグの覇者・南海は同年も優勝候補とみられていたが、開幕ダッシュに失敗。4月を5勝13敗と大きく負け越すと、5月下旬に入っても浮上の気配がなく、8勝25敗1分で最下位に沈んだまま。5月26日、鶴岡一人監督は「チームを引っ張っていく者として、その資格を欠いてきたように思う」と休養を発表し、蔭山和夫打撃コーチが監督代行に就任した。
球団史上初の監督交代劇という“ショック療法”で選手の奮起を図ったようだが、「事実上の引退か?」と報じる新聞もあった。
その後も投手全員が不調で「投げてみなければ調子がわからない」チームは低迷を続け、6月に入ると4試合で35失点を喫し、4連敗。ついに10勝30敗2分の借金20となった。
だが、翌6日の東映戦で久しぶりに投打がかみ合って8対2と快勝すると、徐々に持ち直し、6月下旬から7月上旬にかけて10連勝と上昇気流に乗った。
借金が6までに減った7月30日、鶴岡監督が「再び情熱が湧いてきた。蔭山君は僕のいない間、本当によくやってくれた」と8月8日の阪急戦からの復帰を発表(蔭山監督代理はヘッドコーチに)。8月は19勝10敗1分、9月には17勝5敗と首位・東映を猛追し、あわや逆転優勝というところまで巻き返したが、最終的に東映と5ゲーム差の2位でシーズンを終えた。
「敗戦処理役」がチームを立て直す
南海に次ぐ史上2位の借金「19」から大躍進を遂げたのが、2010年のヤクルトである。
開幕から3カード連続勝ち越しと好調なスタートを切ったヤクルトは、打線が調子を落とした4月中旬以降、好投の投手を見殺しにする試合も多くなり、5月以降は黒星街道まっしぐら。5月26日の楽天戦で敗れ、交流戦開幕から9連敗の13勝32敗1分となった試合後、高田繁監督が「これだけ(連敗で)騒がせて、選手が思い切って野球に打ち込める状況ではなかった」と事実上の辞任を発表。小川淳司ヘッドコーチが監督代行に就任した。
突然の敗戦処理役に「一生懸命前向きに頑張るしかない」と腹を括った小川監督代行は、2軍から抜擢した畠山和洋や緊急補強の新外国人・ホワイトセルが活躍するなど、打つ手が次々に当たり、最終的に72勝68敗4分の4位までチームを立て直した。代行として指揮をとってからの成績は59勝36敗3分、勝率.621。12球団の監督の中でもトップの成績だった。
この実績が評価され、翌11年から正式に監督就任。外れ1位とはいえ、山田哲人も村上宗隆も小川監督が引き当てたことを考えると、大借金返済以上にチームに大きく貢献したと言えそうだ。
このほか、1966年の阪神がヤクルトと同じ借金「19」、91年のオリックスが借金「16」からいずれも3位まで挽回している。
さすがに、逆転Vまで上りつめたチームは過去にないが、今季の阪神はシーズン1位を逃しても、クライマックス・シリーズから史上最大の「借金返済ミラクル日本一」を実現する可能性は残されている。
連敗→連勝→連敗→連勝と波が大きく、開幕からずっとファンをハラハラドキドキさせている阪神だが、最後の最後で笑うことができるか。
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