アームレスラー「山田よう子さん」は五児の母 イジメも受けた“壮絶人生”を本人が語る

スポーツ

  • ブックマーク

Advertisement

輝かしい戦績

 確かにこの頃の彼女の戦績には、本当に驚かされる。一部、その活躍を時系列で確認しよう。

■アームレスリング
・2002~2012年…「全日本アームレスリング選手権大会」で日本最多の11連覇
・2004年…南アフリカ・ダーバンで開催された「第26回WAF世界アームレスリング選手権大会」で、女子-50kg級左右で3位入賞
・2005年…「第27回WAF世界選手権東京大会」で、シニア女子-45kg級ライトハンドで世界王者となる

■総合格闘技
・2003年…総合格闘技戦デビュー。デビュー戦含めその後、無傷の3連勝を飾る

■プロレス
・2006年…プロレスデビュー。

 その後、マネージャーが一時期不在になってしまった問題などもあり、32~33歳の頃、アームレスリング1本での活動となっていく。

 そして、32~33歳の頃、事務所の問題などもあり、その後、彼女はアームレスリング1本に絞っていくが、彼女は「今までの人生で一番感動したこと」出産を、37歳で体験することになる。

――36歳の頃「子供が欲しい」と強く思い、37歳で初めて出産しました。

 その後、双子ができるのですが「双子を生んだ後、アームで世界を獲ったらすごいなあ」と思って、世界へチャレンジしてみたら、案外簡単に獲れたんです。

 ちなみに、彼女がアームに照準を絞った出産後の戦績を見てみよう。

■全日本アームレスリング選手権
・女子-50kg級レフトハンド優勝、同-50kg級ライトハンド優勝(2017年)
・女子-50kg級レフトハンド優勝、同-50kg級・同-55kg級ライトハンド優勝(2018年)
・女子-52kg級レフトハンド優勝、同-52kg級ライトハンド優勝(2019年)
・女子-52kg級レフトハンド優勝、同-52kg級ライトハンド優勝(2021年)

■韓国国際アームレスリング大会 第5回シルヴィスクラシック 
・女子無差別級優勝(2018年)

■マレーシア国際チャリティーマッチPREMIER101
・女子-65kgライトハンド優勝・同オーバーオールクラス優勝(2019年4月)

■「プロアームレスリング ズロッティ」(アームレスリングの頂点を決める、世界最大規模のプロアームレスリング大会)
・日本人初52kg優勝(2019年)

 2021年、45歳の彼女は二度の帝王切開を含む5度目の出産を経験するが、この出産後のトレーニングで、自分の身体に起きている“異変”を感じたと言う。

――今まではある程度トレーニングをすれば身体は自分のイメージしたように戻ったのですが、1~2日練習を空けてしまった直後に今までと同じ練習をしても身体が元に戻らないのです。だから、それ以降特に練習についてはストイックになっていきました。

 失礼かもしれないが、アームレスリング、総合格闘技、プロレスを今までこなしながら、出産を5回重ねた40代半ばの身体が悲鳴を上げても、それはまったく自然なことだと思う。しかし、今後の目標について、彼女はこともなげに屈託のない笑顔でこう言い放った。

――47歳でもう一度世界を獲ること。そして、もう一度出産すること。それが今の私の目標なんです。

 彼女ほどのアスリートが、自身の年齢に伴う身体の変化に敏感でないはずがない。

 口にこそしなかったけれど、年齢を重ねることによる変化やそれに伴うトレーニングの厳しさを彼女はきっとシビアに感じているのだろうと思う。

 また、現役から撤退して後輩の育成に努めることだって、自然なアスリートの齢の重ね方だろう。

 しかし、山田さんはそうはしなかった。

 彼女の人生に一番の感動をもたらした2つの出来事、「タイトル奪取」と「出産」を50歳前にもう一度やってみたいと強く思い、その目標に向かってシンプルに動くことにしたのだ。

 そういえば、彼女はこんなことも言っていた。

「いろいろ考えると負けてしまうんですよ」

 おそらく、彼女は頭の中を意識して一度“真っ白”にし自分の自然な状態を想像した上で、自分が向かうべき方向を探し当てたのではないかと思う。

 私たちは日頃、会社や世間や周囲の声をあまりにも聞きすぎながら歳を重ねてはいないだろうか。山田さんのように一度は意図的にそうした声から遠ざかって、自分のこれからのことを考えてみるのも、私たち凡人にとってこそ実はいいのかもしれない。」

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。