踏んだり蹴ったりの巨人 投手陣はなぜ崩壊したのか【柴田勲のセブンアイズ】

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投手陣だけでない問題点

 とにかく今季の巨人投手陣はコントロールが悪すぎる。チーム防御率4.09、300与四球は12球団ワーストだ。投壊だ。

 菅野だけの話ではないが、全体的に球が甘くなって相手打者のベルト周辺に集まる傾向がある。これでは力があっても打たれる。

 原辰徳監督は5位に転落した時に、満塁本塁打に関して「私とコーチ陣の指導が悪いということ。しっかり指導していく」とコメントしていた。

 その投手陣を預かっているのは桑田真澄投手チーフコーチだ。現役時代は抜群の制球力を駆使して活躍してきた。昨年、巨人に復帰したが、彼が一番力を注いだのは投手陣全体の制球力向上だったはずだ。それなのにどうして最悪の結果が出ているのか。もう一度根本から見つめ直す必要があるのではないか。

 投手陣だけではなく、主戦捕手の大城卓三のリードにも責任がある。投手一人一人のその日の出来や調子をつかみ、「どの球ならストライクを取れるか」を考え、常に投げさせることを心がけるべきだ。打者を抑えた、打たれたは結果論だ。打たれたら次は精度を高める練習をすればいい。

 打者を追い込みながら例えば内角の難しいところを要求してそれが甘く入る。打者は甘い球を待っている。打たれる。投球の基本はまず外角低めだが、どの球ならストライクを取れるかを日頃から考えた方がいい。今季プロ5年目だ。主戦捕手の自覚がほしい。

コロナ禍を乗り越えた先に

 本来、成績不振の責任を最終的に負うのは監督である。巨人もこの体たらくではなにを言われても仕方ない。今季は開幕からスタートダッシュを決めていただけに尚更だ。

 20日のヤクルト戦で新外国人のイアン・クロール投手が初登板したが、村上宗隆に32号3ランを浴びた。今頃の時期に来日した投手だ。米球界だって好投手はノドから手が出るほど欲しい。

 巨人のフロントにすればもちろん原監督へのバックアップであり、同時に原監督に責任を押し付けたくないとの配慮もあるのだろう。

 今回のコロナ禍には巨人も危機感を募らせているようだ。現在、支配下選手で陽性判定を受けていないのは投手20人、捕手3人、内野手5人、外野手7人だという。坂本勇人と若林晃弘の二人はリハビリ中だ。試合に出場可能の内野手が3人では無理だ。

 巨人は球宴を挟んで29日からのDeNA戦(横浜)が後半戦の再開となる。それまでにチーム編成が可能になればいいが先行きは不透明だ。

 コロナ禍を乗り越えて上昇カーブを描いてほしい。最下位だけは見たくない。
(成績は21日現在)

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長を務める。

デイリー新潮編集部

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