「幽☆遊☆白書」キャスト発表、なぜ「少年マンガの実写化」は炎上する? 「ヤンキーマンガ」「少女マンガ」が許される理由

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 NETFLIXオリジナル・実写版「幽☆遊☆白書」のキャスト発表が波紋を呼んでいる。主役の浦飯幽助役に北村匠海さん、蔵馬役に志尊淳さん、飛影役に本郷奏多さんが発表された。「少年ジャンプ」の黄金期を築いた人気漫画であり、特に主人公をしのぐ人気を誇った蔵馬と飛影については、誰が演じることになっても批判はあっただろう。むしろネガティブな反応をわかった上で、引き受けた志尊さんや本郷さんらの勇気には頭が下がる。特に本郷さんといえば数々の実写化作品で期待を上回る演技を見せてきた人だ。だからこそ心苦しいが、ビジュアル発表時には「俳優はいいのになぜこうなった」という印象が否めなかった。

 そもそも2次元作品の実写版はファンにとっても映画界にとっても鬼門だったはずだ。今年は「鋼の錬金術師 完結編」もあったが、2017年の第1作から議論が巻き起こっていた。キャストイメージの違いやCGの出来、ストーリーが初見ではわかりにくいなど、批判的なレビューも目につく。あまりにネガティブな話題が先行したせいか、観客動員ランキング初登場9位とふるわずオープニング3日間の興行収入は1億円に満たなかった。同時期の「シン・ウルトラマン」は公開10日間で134万人の動員と興収20億円を突破したのを考えると差は明らかである。ちなみに「シン・ウルトラマン」の樋口真嗣監督でさえ、「進撃の巨人」実写化で大炎上した苦い過去がある。

 一方、成功例として代表的なのが山崎賢人さん主演の「キングダム」だろう。やはりさまざまな批判もあったが、2019年版は57億円の興行収入を記録。その年の邦画実写映画ナンバーワンという栄誉を手にした。さらに先日公開された続編は、前作を上回る初日動員数を記録したという。壮大なスケール感を壊さず、見応えのあるアクションシーンや役者たちの熱演は好評だ。前作のONE OK ROCKに代わり、Mr.Childrenが主題歌を担当したというのも話題に。製作費はパート1を超える「通常の邦画7本分」にもなるという。

少年マンガはケチがつきやすい? 少女マンガと違う「チェックポイントの多さ」

 少年マンガだけではなく、少女マンガの実写化も後を絶たない。現在は生見愛瑠さんと岩本照さん主演の「モエカレはオレンジ色」も公開中だ。しかし幽白やハガレンほどの批判の声もなく、公開週の週末ランキングでは邦画1位と、なかなかの好発進である。注目度の問題もあるだろうが、少女マンガよりも少年マンガはチェックポイントが多いということではないだろうか。

 少女マンガの実写化は、ほぼキャスティングに批判は集中する。かつては剛力彩芽さんや土屋太鳳さんが、「ゴリ押し」と反感を買っていた。最近だと広瀬すずさんと橋本環奈さんが実写化作品の常連だが、彼女たちの2次元的な美しさをもってしても叩かれることはある。原作に近いか否かというより手垢がつきすぎておらず、自己投影できる美男美女が求められているのかもしれない。だからCGや壮大な世界観は必要ない。

 一方少年マンガは、配役以外にも注目ポイントが多岐にわたる。それは幽白にしろハガレンにしろ、ファンタジー要素や海外が舞台という背景を含むものが多いからだろう。見せ場であるバトルシーンがCG処理され、コスプレ感満載の派手髪カラコン姿の棒読みでは興醒めしてしまう。かといって原作にはない要素やオリジナルキャラで辻褄を合わせようとしても、ファンは反発する。

 逆に言えば「東京リベンジャーズ」や「クローズ」などヤンキーマンガが成功しやすいのは、日本が舞台かつ超能力的なアクションが不要だからなのかもしれない。金髪や入れ墨などの見た目の異様さも、アウトローゆえの感覚のズレという見え方に変換できる。にらみを利かせて大声で怒鳴り拳をぶつけあうのがフォーマット化しているし、演技力よりもケンカシーンの派手さやカタルシスが注目されがちだ。

 キャストのビジュアルと演技力、CGの仕上がりに美術セット。そして破綻のないストーリー展開と音楽。少年マンガ実写化には、通常作品以上に金と時間がかかる。が、本当に問われているのは原作へのリスペクトだろう。キャスティングや美術制作の奥に、自分たちを納得させる熱量があるかどうかを、原作ファンたちは常に冷静に見ている。

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