古巣に復帰しなかったメジャー出戻り選手たち かつて「しょうもないチーム」とこき下ろした球団に移籍したケースも

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古巣・中日は早々と撤退

 12年オフ、福留がヤンキース傘下3Aスクラントンを自由契約になると、複数の球団が興味を示した。その後、福留が米でのプレー継続を断念し、国内1本に絞ると、事実上、阪神vsDeNAの一騎打ちとなる。

 DeNAは「福留が来てくれると、打線がしっかりする」(高田繁GM)と、2年契約の出来高込みで総額最大4億円を提示した(その後、3年契約6億円に条件アップ)。

 これに対して、阪神は、引退した金本知憲の後釜として、福留の勝負強い打撃と守備範囲の広さを評価しつつも、当初は「マネーゲームにはしない」方針の下、2年契約の総額3億円プラス出来高、3年目は球団側に選択権のあるオプション契約を提示した。

 だが、「DeNA有利」の情報が流れると、「ベースは変更しないつもりだが、インセンティブの見直しをまったくしないわけではない」(中村勝広GM)と3年総額最大7億5000万円を提示。それでも、福留によれば「DeNAのほうが少しだけいい条件」だったそうだが、“聖地”甲子園でプレーできることも決め手となり、最終的に阪神に決まった。

 両球団の争奪戦を尻目に、マネーゲームを望まない古巣・中日は早々と撤退していたが、20年オフ、福留が阪神を自由契約になると、「まだ1軍戦力でやれる」と入団させ、14年ぶりの復帰が実現するのだから、野球選手にとって、古巣は“故郷同然”と言えるかもしれない。

「一緒にやろや!」

 古巣復帰を断り、意外にもかつて「しょうもないチーム」とこき下ろした球団を選んだのが、中島宏之(現巨人)である。

 14年オフ、アスレチックスをFAになった中島に対し、古巣・西武は3年総額8億円以上のオファーを出し、復帰を要請したが、保有最終期限の11月30日まで連絡はなかった。「脈あり」と見て、同日にオリックス、12月1日には阪神も獲得に名乗りを上げ、中日、DeNA、楽天も含めて激しい争奪戦となった。

 その後、中島は12月4日に西武を断り、中日なども高額な条件から脱落。中島の地元・関西を本拠とする阪神、オリックスの両球団に絞られた。

 リーグ5位の94本塁打と長打力不足の阪神は、右の長距離砲の入団を熱望し、勝率わずか2厘差で優勝を逃したオリックスも、小谷野栄一、ブランコらとともに“30億円補強”の目玉として、中島獲りに全力を挙げた。

 最終的に4年総額10億円以上を提示した阪神が有利とみられていたが、土壇場で中島は4年総額15億円を提示したオリックスを選ぶ。

 オリックスといえば、中島は西武時代の11年に高宮和也から受けた死球に激高し、「しょうもないチーム」と一刀両断にした因縁の相手だった。

 だが、小学校時代にバッテリーを組んだ山崎勝己が在籍し、「一緒にやろや!」と熱心に誘ったことが、「それが大きかったですね」(中島)と、破格の条件とともに背中を押す形になった。

「変わろうとしているチームが、優勝するために貢献できればと思いました」と新天地での抱負を語った中島だったが、皮肉にもオリックスは翌15年、ソフトバンクと30ゲーム差の5位に沈み、「大金をかけても勝てるとは限らない」を証明する結果になった。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮編集部

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