政府がここにきてワーケーションを推奨する裏事情 背景に“観光利権のドン”菅義偉前総理が

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 白砂のビーチを眺めながらオンライン会議――。「ワーケーション」と聞いて思い浮かぶのは、こんなイメージであろうか。そんなワーケーションの実証事業を行うために、観光庁が参加企業と「地域」の公募を開始したのは6月17日のことである。

 観光庁観光資源課の担当者によると、

「ご存じのようにコロナ禍ではテレワークを導入する企業が増えました。それを観光地でやってもらいたいというのがワーケーションです。そこで、参加したい企業と自治体に手を挙げてもらい、試してみることになった。観光庁としても、宿泊費を補助するなど全面的にバックアップします」

 ずいぶんと前のめりなのだが、2020年度には約700億円だったワーケーションの市場規模が、25年度には3600億円超に拡大するという試算もある。が、国交省の担当記者が言うのだ。

「ワーケーションそのものは10年ほど前からあったのですが、そこに目を付けたのが“観光利権”のドン・菅義偉前総理です。菅さんはインバウンド政策を進める一方で、全国の自治体に声をかけ、ワーケーション施設を作らせた。ネット環境が整った宿やリゾートにあるコワーキングスペースなどです」

「実際の効率はそれほどでもない」

 ところが、コロナ禍でこうした施設も閑古鳥が鳴くことに。そこで、観光庁が音頭を取ってテコ入れを始めたわけだが、同庁が紹介している導入企業を見ると、日本航空、野村総研、内田洋行など、政府の“お誘い”を断りづらそうな名前が並ぶ。同庁によると現状の導入企業は5%程度だそうである。

 千葉商科大学准教授で、働き方評論家の常見陽平氏が言う。

「一般の会社員はワーケーションといっても仕事と休暇の区別が難しいのが現状です。デスクワークの人は可能でも営業マンは難しいなど職種でも差がついてしまう。また、ワーケーションによって生産性が上がるとしていますが、行き帰りの移動時間を含めると実際の効率はそれほどでもありません」

週刊新潮 2022年7月7日号掲載

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