4630万円誤送金問題、田口被告が340万円返済で阿武町の被害額は0円 裁判にどう影響するか

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ポイントは借用書

 阿武町は誤送金した全額の返還などを求め、山口地裁萩支部に民事訴訟を起こしていた。3社から振り込みがあった20日、田口被告側は町の請求を受け入れる「認諾」の手続きを行った。

「認諾」が行われたことで、阿武町は山口地裁に債権の差し押さえを申し立てた。6月8日、地裁の命令書送達から1週間が経過し、阿武町に取立権が発生。やっとのことで4300万円の回収に成功した。

 こうして振り返ってみると、回収に大変な手間暇がかかったことが分かる。しかも田口被告がしたことと言えば「認許」くらいのものだ。これで「田口被告が返済しました」と言われても、納得できない人が大多数だろう。

 元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は、「田口被告が返済したと判断できるかどうかは、今後行われる刑事裁判でも争点になるかもしれません」と言う。

「重要なのは、まず借用書のようなものがあるかどうかです。田口被告が決算代行業者とも、“ホワイトナイト”氏とも、借用書を作っていないのであれば、『自分が返済しました』と主張するのは難しいのではないでしょうか」

検察は起訴

 では、借用書を作成していたとしたらどうなるか。その場合は、田口被告が4300万円と340万円の借金が可能な“担保”を持っているか否かが焦点になるという。

「田口被告が同価値の土地や株券を所有していれば、借用書は法的に問題がないと判断されるでしょう。また、田口被告には裕福な親類がおり、保証人になってくれたのなら、これも認められるはずです。しかし、田口被告が無一文で、4300万円の借金など不可能ということが明らかになれば、仮に本物の借用書が存在しても、法的には無効と見なされる可能性があります」(同・若狭弁護士)

 決算代行業者3社が阿武町に4300万円を振り込んだのは5月20日だった。このため若狭弁護士は、「検察が起訴するか否か」を注視していたという。

 5月20日に田口被告側は「認許」を行い、阿武町は差し押さえの法的手続きを開始した。山口地検からすると、4300万円の回収は折り込み済みだったことになる。

 一般的に詐欺罪は、被害額が小さくなればなるほど、不起訴や起訴猶予の可能性が出てくる。だが、山口地検は6月8日、電子計算機使用詐欺罪による起訴に踏み切った。

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