フジ「永尾亜子」、TBS「高野貴裕」アナも アナウンサーが広報・宣伝部で重宝される3つの理由

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「左遷」ではない

 ただし、アナから広報・宣伝セクションへの異動が左遷かというと、それは違う。前出の日テレ・木村優子さんはスターアナとして活躍後、広報・宣伝セクションを経験し、その後はコンプライアンス推進室視聴者センター部長などを歴任。イベントなどを手掛ける日テレの子会社・株式会社J.M.Pの代表取締役を務めていた。

 同じく前出・テレ朝の堀越むつ子さんはアナとして入社し、アナウンス部長、広報局長を歴任した後の2005年、在京民放キー局で初の取締役に就任した。社内の誰もが納得の就任だった。

 報道局に籍を置いていた1994年度、在宅ホスピスをいち早く取り上げたドキュメンタリー「愛する人たちへ最期は家で……」をつくり、新聞協会賞を受賞したからだ。同賞はその年の報道の1等賞みたいなものである。

 競馬実況で名を馳せたフジの盛山毅さんは広報部長として危機管理の最前線に立った後、美術局長を経て、子会社・共同テレビのナンバー2である専務に転じた。

 そもそも今の時代は広報・宣伝自体がエリートコースなのだ。銀行業界では広報が古くから出世コースだったが、近年は民放もそうなった。テレ朝のドンである早河洋会長兼CEOも広報局長経験者である。

 フジ副会長で社長も経験した遠藤龍之介氏(66)も元広報局長。編成部で外部制作のドラマなどを手掛けたが、広報畑が長かった。

 日テレがフジから視聴率3冠王を奪い取った時の編成局長で後に社長となる萩原敏雄氏(86)も広報局長を経験した。

 今月末に専務になるフジの大多亮氏(63)も報道局社会部記者、広報・宣伝マンを経て売れっ子プロデューサーになった。

 なぜ、広報・宣伝が民放ではエリートコースなのか? 第1に社内の情報が全て集まるからだ。新ドラマの話から番組絡みのトラブル情報、社員個人の不祥事……。良い話も悪い話もすべて集まる。どの企業も情報が多い部署ほど社から信頼されたエリートで固められる。情報は企業の生命線だからだ。

 情報の出し方も簡単ではないから、やはりエリートを揃える必要がある。解禁時期が来るまで決して明かせない番組情報が多いし、社員の不祥事は発表を慎重にしないと2割増し、3割増し、それ以上に叩かれてしまうからだ。

 エリートコースであることを度外視しても、広報・宣伝セクションは人気が高い。まず制作と違ってタテの関係が緩いからだろう。広報・宣伝でパワハラやいじめが起きたなんて話は聞いた試しがない。個人の裁量権が大きいからだ。

 一方、予算はある。懇親の名目で新聞記者と飲むから、カネが使える。経費削減の時代なので、もはや外部の人間と飲めるのは広報・宣伝セクションくらいだろう。悪い部署ではない。

 フジの永尾アナとTBSの高野アナは腕利きの広報・宣伝担当者となるのか……。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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