ヤクルト戦「魔の8回」でなぜ大勢を使わなかったのか【柴田勲のセブンアイズ】

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ヤクルトのずば抜けた強さ

 1シーズンの143試合で3分の1はなにもせずに勝てる、3分の1はなにをどうやっても勝てない、残り3分の1をどうするか。

 26日はこれだったのではないか。

 抑えは「限定1イニング」、巨人だけではなく他球団も同じようだが、これはちょっと違うと思っている。時と場合による。

 それにしてもヤクルトの強さはずば抜けている。巨人戦の勝ち越しで12カード連続勝ち越し、史上初の11球団から連続勝ち越しを達成したという。

 昨年日本一になった自信を持って戦いに臨んでいる。投打がかみ合い、また一方がダメな時は一方が補う。先発投手陣が崩れても中継ぎ陣が踏ん張り打線の奮起を呼ぶ。

 巨人はこの3連戦で32失点。リーグ2位の304得点は挙げているが、失点が12球団ワーストの327。与四球数も233でこれまた12球団ワーストだ。3連戦でも四球から失点するケースが目についた。

 私も記憶があるが、あまりにも投手陣の失点が多いと「どれだけ点を取れば勝てるんだよ」と言いたくなるものだ。

 とにかくまずは菅野智之、戸郷翔征、C.C.メルセデスの3本柱がしっかりすることが大事だ。でも今季の菅野はピリッとしていない。本来の球の切れや細かい制球力に欠けている。戸郷は真っすぐとフォークを淡々と投げている。26日の先発でももう少し粘ってほしかった。メルセデスはいい球を持っているが最後の詰めが甘い。

なぜ吉川尚輝を1番に起用しないのか

 中継ぎ陣の再整備も待ったなしだ。イキのいい中継ぎが一人出てきただけでも違う。

 打線はやはり岡本和真に尽きる。大黒柱が活躍してこそ他の選手たちも伸び伸びとやれる。いいムードを作る。ヤクルトの村上が好例でチーム全体を引っ張っている。幸い、打線は上向いている。

 増田陸が必死で頑張っている。原監督は25日から1番で起用している。だが彼は、打てば「ラッキーだ」「よかった」という選手で、1番のタイプではない。7、8番だろう。

 毎回指摘しているが、なぜ吉川尚輝を1番に起用しないのか。しつこく言う。理解不能だ。今度は8番で起用している。

 私なら打線は1番・吉川尚、2番・坂本勇人、3番・丸佳浩、4番・岡本和、5番アダム・ウォーカー、6番グレゴリー・ポランコとする。7番には大城卓三、そして8番には増田陸だ。これが基本で、もちろん左右投手によって替えることもあろう。

 私は今シーズンの予想を巨人、ヤクルト、阪神の3強と広島、中日、DeNAの3弱と見たが、現在は「1強5弱」となっている。ヤクルトをここまで走らせたのは2位・巨人の責任が大きい。振り返れば広島が巨人に1ゲーム差と迫ってきた。2位以下の争いも混沌(こんとん)としてきた。

 巨人、自力Vの可能性は消えても最後まで全力で戦ってもらいたい。なにが起こるか分からないのだから。
(成績は27日現在)

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長を務める。

デイリー新潮編集部

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