なぜいま「スポーツ賭博解禁」議論が必要なのか スポーツ界の未来を占う「7兆円産業」創出

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「スポーツ賭博の解禁案、経産省が議論へ…八百長や依存症懸念で猛反発は必至」

 刺激的な見出しが読売新聞に躍ったのは6月7日。記事はこう報じている。

観測気球

〈経済産業省が、スポーツの試合結果やプレー内容を賭けの対象とする「スポーツベッティング(賭け)」の解禁に向けて取りまとめた素案が判明した。スポーツ賭博を通じて放映権料や広告収入の拡大につなげ、スポーツ産業の活性化につなげる狙いがある。だが、八百長やギャンブル依存を招きかねないスポーツ賭博には反対論が強く、スポーツ界はじめ各界の猛反発は必至だ〉

 報道の当日すぐ、萩生田光一経済産業相、松野博一官房長官がともにこれを否定した。時事通信はこう報じた。

〈萩生田光一経済産業省は7日の閣議後記者会見で、経産省がスポーツ賭博の解禁案をまとめたとの一部報道について、「私が承知する限り、経産省が主導してスポーツ賭博を直ちに実現する動きをしている事実は全くない」と否定的な見解を示した〉

 このように、スクープ報道はすぐに否定されたわけだが、観測気球を打ち上げ、反応を確かめ、サッと話題を引っ込めた、そんな印象を受けた。

 記事も指摘している通り、「スポーツ賭博など、とんでもない!」という世論の猛反発が容易に予想され、現段階では「解禁などありえない」と感じる人が大半を占めているのではないか。そんな社会の空気が想像される。だがそれでも、スポーツ賭博解禁を検討する必要があるから一部で議論が行われ、このようなジャブを打ち始めているのではないか。

財源として

 端的に言えば、一部アスリートの強化だけでなく、ジュニア世代、シニア世代も含めた全国民の心身の健康増進、生きがいの充実をもたらすスポーツ環境整備は目下の急務だし、重要課題と思うが、その財源が恐ろしく少ないのだ。

 日本のスポーツ関連の国家予算がどれほどの額か、即答できる読者がどれほどいるだろう。今年度予算で約355億円が計上されている。そのうち約100億円がエリート・アスリートたちの強化予算だ。残り約250億円で、国民のスポーツ関連施策を行う。これが多すぎるとは到底思えない。

 355億円がどれほどの額か理解するため、メジャー・リーガーの年俸と比較してみよう。来年以降、大谷翔平選手(エンジェルス)が一体どれほどの額で契約するか、各メディアが注目している。他の一流選手の相場とも勘案し、今季も活躍を続ければ「年間67億円になる可能性も」と報じられている。仮に67億円なら、国の年度予算が大谷クラスのメジャー・リーガー6人分に満たないことになる。

 一方、国民の医療費は、令和3年度で約9兆8000億円と発表されている。これを減少させるポジティブな方法として、スポーツの普及振興が重要とされている。仮に医療費が1割減になれば、新たな財源が1兆円生まれる。つまり1兆円をスポーツ予算に投入しても元が取れるのだ。とはいえ、現状、そのロジックでのスポーツ予算増額の予定はなく、他の方法で財源を確保するしかない。その切り札として検討されているのが、スポーツ賭博の導入なのである。

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