レスリング女子 18歳の「藤波朱理」が明治杯を制して100連勝 吉田、伊調と比較すると

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 東京・駒沢体育館で6月16日から19日まで行われたレスリングの「明治杯全日本選抜選手権」の女子53キロ級で、18歳の藤波朱理=日本体育大学=が圧倒的な力で優勝し、2連覇。昨年12月の全日本選手権(天皇杯)でも優勝しており、9月の世界選手権(ベオグラード)の代表に決まった。さらに、中学生だった2017年9月から続く公式戦の連勝記録が100に到達した。【粟野仁雄/ジャーナリスト】

高校在学中に世界選手権制覇

 藤浪は決勝で2018年の世界王者だった奥野春菜(23)=自衛隊体育学校=と対戦した。得意のタックルを封じられたが、「想定していた」と落ち着いて対処し、4-0で全く危なげなく勝ってしてしまった。この日の3試合は全て無失点と、防御力も光る。

 藤波はオリンピック3連覇の吉田沙保里(39)と同じく三重県の出身。昨年秋、三重県立いなべ総合学園高校在学中に世界選手権(オスロ)を制し、東京五輪に注目が集まっていた陰で彗星のように登場し、周囲を驚かせた。

 高校生で世界選手権を制したのは、オリンピック4連覇の伊調馨(38)=選手兼コーチ=をはじめ、山本美憂(47)=総合格闘家=、今大会で優勝した東京五輪金メダリストの須崎優衣(22)=キッツ=らに継ぐ5人目だ。あの「霊長類最強」吉田沙保里ですら達成していない。

 今春から日本体育大学に進んだ藤波は、このクラスとしては長身の164センチあり、長い手足を活かしたタックルからの攻撃を得意とする。日体大のマットでは、父の俊一さん(57)やレジェンド伊調馨の指導を受けており、週のうち半分くらいはスパーリングで伊調と取っ組み合っているという。

 伊調はかつての吉田とはタイプが異なり、タックルより組み手や体の裁きの巧みさで世界を制してきた。彼女の指導について、藤波は「勉強になることばかりで、すごく世界が広がる。自分はまだまだだなあと感じます」と話した。

父親と二人三脚

 父親の俊一さんはソウル五輪の代表候補だった。兄の勇飛(26)は2017年の世界選手権の男子フリー70キロ級で3位に入ったこともあり、現在は総合格闘家に転じている。まさに格闘技一家だ。俊一さんは娘のために高校教員を早期退職し、日体大の近くに借りたマンションに娘を呼び寄せて食事を作るなど生活面でもサポートしている。

 今大会の勝利の翌日(19日)の日曜日は「父の日」だった。俊一さんは「一度もプレゼントもらったことないので忘れていました」と暴露したが、優勝、そしてベオグラード行きは、何よりのプレゼントだろう。娘は「普段は(お礼を)言えませんけど、感謝したい」とはにかんだ。

 俊一さんは愛娘について「とにかく勝気で負けず嫌いだった。幼少時から家族でゲームのようにレスリングをしていたけど、負けると悔しがって何度も向かってきた」と振り返る。

 大会は観客の多い最終日の19日(日曜日)に東京五輪のメダリストたちがまとめられたこともあり、18日の取材陣は藤波に集中していた。

 レスリングの連勝記録といえば、五輪3連覇の吉田沙保里の206(団体戦は除外)がトップ。2位は伊調馨の189だ。これらについて藤波は「すごい存在で目標にするとも言えない。でも少しでも近づきたい」などと語った。だが、盛んに100連勝の感想を聞かれると「自分の中では連勝は過去のこと。マットに立てば連勝記録は関係ないです。目の前の試合に勝つことに集中したい」と、達成した偉業に浸る気持ちもなかった。

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