立浪以来の高卒ショート!“令和の牛若丸”滝沢夏央を獲った西武の“金の卵”発掘法

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猛打賞に加え、好守を連発

「シンデレラボーイ」とは、まさに“この選手”を表現するためにある言葉だ。西武の高卒ルーキー、滝沢夏央のことである。5月13日に故障で離脱した源田壮亮の代役を期待されて一軍初昇格を果たすと、初スタメンとなったその日の楽天戦でプロ初安打をマーク。翌日には7回に同点に追いつくタイムリースリーベースを放ち、その後の暴投で決勝のホームを踏み、試合後にはヒーローインタビューでお立ち台にも上がった。【西尾典文/野球ライター】

 5月22日の日本ハム戦では3安打猛打賞を記録したほか、持ち味である守備では、とても18歳とは見えない好守を連発している。日本球界で最小兵となる164cmという身長とそのスピードから“令和の牛若丸”との声も上がっている。

 高卒1年目の選手が、一軍のショートとしてこれだけ結果を残せるのも珍しいが、さらに驚きなのが、育成ドラフト2位から短期間に這い上がってきたことだ。ドラフト制度ができて以降、高卒1年目からショートで活躍ができた選手は、中日の立浪和義(現・中日監督)しかいない。その立浪は、1位指名で入団していることを考えると、いかに滝沢の存在が異色だということがよく分かる。

判断材料に乏しかった高校時代

 なぜ1年目からショートという重要なポジションで活躍できる選手が、育成ドラフト2位という低い評価になったのだろうか。164cmという小柄な身長はもちろん影響しているが、他にも要因はある。

 大きかったのは、故障とチーム事情だ。滝沢は新潟県上越市にある関根学園に所属していた。2年秋には北信越大会で準決勝まで勝ち進んでいるが、当時の滝沢は腰の故障を抱えながらのプレーであり、本調子ではなかったという。

 また、3年夏は、チームに力のある投手が少なく、「背番号1」で選手登録をされていたほか、4回戦までの4試合は、秋に痛めていた腰の影響もあって試合にすら出場していない。

 滝沢が唯一出場した準々決勝の日本文理戦でも3番、投手としてプレーし、チームは延長戦の末に2対5で敗れている。筆者は、この試合を現地で取材していたが、投手としてのフィールディングや脚力に光るものはあったものの、野手としての能力は判断材料に乏しかった。

 西武以外のスカウト陣は、それ以前から、滝沢をマークしていたとしても最後の夏に1試合しか出場できず、しかも本職のショートではないとなれば、ドラフト候補として強く推すのは難しかったという。

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