独立リーグ・高知が目指す「スポーツと教育の融合」という新たな試み

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「ラシィナ」という“成功例”

 2018年の法務省統計局在留外国人統計によると、高知で暮らす外国人は4580人。その当時の人口比率からしても、わずか0.6%に過ぎない。

「高知県の人も、このところで慣れていってもらう必要があると思うんです。外国人が活躍しだしてくれたら、もう一歩先に進んでいくと思うんです。外国人も来てもらって、家族もそこで暮らしてもらって、一緒に日本の社会に彼らも入ってもらう。それがベストだと思うんです」

 佐竹のプランは、理想論なのかもしれない。

 それでも、高知にはすでに「ラシィナ」という“成功例”が存在している。高知で暮らし、野球の実力もつけ、日本の生活に完全になじみ、地域の人々からも愛されていくという、その“経緯”もすでに示されている。

 シーズンオフに、ラシィナは高知の名産・ショウガの収穫のアルバイトを行うのだが、ラシィナの“ショウガ引き”の速さは評判なのだという。生産者の農家からは「ラシィナ君みたいなアフリカの青年たちが来たら、どんどんウチによこしてくれ」とまで要望されているという。

 そうやって、外国人が地域のコニュニティーに溶け込んでいく。その実績とモデルが、地域の理解も深めていく。

 そして、その“スポーツと教育”というパッケージに賛同して、南米パラグアイから、一人の日系人が、2022年4月、高知へとやって来たのだ。(最終話に続く)

※ サンホ・ラシィナは、高知で主将を務める外国人選手。日本の海外青年協力隊員に野球を教えてもらった。2013年に野球関係のプロジェクトを通じて、アフリカの小国「ブルキナファソ」から来日。引退後は、野球を通して母国と日本を繋ぐ仕事をしたいという目標がある。

喜瀬雅則(きせ・まさのり)
1967年、神戸市生まれ。スポーツライター。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当として阪神、近鉄、オリックス、中日、ソフトバンク、アマ野球の各担当を歴任。産経夕刊連載「独立リーグの現状 その明暗を探る」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。産経新聞社退社後の2017年8月からは、業務委託契約を結ぶ西日本新聞社を中心にプロ野球界の取材を続けている。著書に「牛を飼う球団」(小学館)、「不登校からメジャーへ」(光文社新書)、「ホークス3軍はなぜ成功したのか」(光文社新書)、「稼ぐ!プロ野球」(PHPビジネス新書)、「オリックスはなぜ優勝できたのか 苦闘と変革の25年」(光文社新書)。

デイリー新潮編集部

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