独立リーグ・高知が目指す「スポーツと教育の融合」という新たな試み

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“第二の人生”を切り開いていくための手段

 この佐竹の語る構想が“ラシィナの目標”(※)を実現させるための土台になるのだ。野球の実力を磨き、独立リーグからNPB、あるいは米マイナー、メジャー、あるいは韓国や台湾球界でのプロを目指すという、野球人としての夢を追いかける。

 ただ、それは厳しく、狭き門でもある。
 
「野球だけで日本に来ちゃうと、選択の範囲が狭くなってしまう。そこに日本語教育というものが入ってきたら、選択肢も可能性もずっと広がる。怪我をしたりとか、いくつかの“まさか”もあるんで、そういうものがあると、彼らとしても日本や高知に来やすくなると思うんです。もし野球で入って来て、野球がダメなら、別に野球じゃなくたっていいわけですからね。そのために我々が日本語をちゃんと教えて、その上で資格も取って、他のことで生きていけるように、それ以外のいろいろな道へのステージを構えてあげることなんです。もちろん野球がものすごく長けていたら、野球にいったらいい。ただ、野球選手で生きていくのは、大変なことですからね」

 もちろん、これは日本人選手にもあてはまる。

 夢破れ、諦めなければならない日が訪れた時、その“第二の人生”を切り開いていくための手段として、資格や専門知識を得て、セカンドキャリアに生かしていく。

 こうした“教育プラン”は、若き外国人選手にとって、異国の地へ挑戦するためのセーフティネットになるのだ。高知球団で、野球以外の事業を統括する責任者である北古味潤は、佐竹の経営する「龍馬学園」で「グローバルプロジェクト推進室室長」を務めている。

スポーツと教育を一つのパッケージに

 北古味と佐竹は、コロナ禍の前には東南アジアや南米といった国々に度々出向き、こうした青写真を説明してきたという。

「向こうの希望は、もちろん野球をやるために日本に行くんだけど、半日は龍馬学園の日本語学科で勉強して、半日は高知ファイティングドッグスの入団に向けた野球のコースとして練習する。これをセットにできるなら、韓国の人たちは絶対、いっぱい行くからと言われました。アジア圏では、台湾もそうでしたね。このプランだと、みんなが来たがります」

 その反応の良さに、北古味も驚かされたという。スポーツと教育を、一つのパッケージにする。
 
 野球を断念しても、高等教育を受けることができれば、後々、日本で生活基盤を築くこともできる。就労ビザが取れれば、母国から家族も呼ぶことができる。日本で結婚して、家族を築き、高知に定住するケースだって出てくるだろう。
 
 こうした2世、3世が高知に定住していくことが、人口減少を食い止めるための一助にもなるだろう。少子高齢化や過疎化の進むコミュニティーに、活力を与えることもできる。

 ただこれは数カ月、数年で実を結ぶものではない。単に人口が少ないから、労働力が不足するから、その補完として外国人を入れようという単純な図式で捉えているのではない。それこそ、数十年という長いスパンで捉えていく必要がある。

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