ウクライナ戦争はこのままでは泥沼化…バイデン大統領の対応にこれだけの疑問符

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仮に「プーチン失脚」ならば…

「プーチン大統領の失脚」という事態が短期的に起きる見込みは低いが、仮に起きた場合どうなってしまうのだろうか。

 1991年のソ連邦崩壊の時には15の共和国という受け皿があったが、現在のロシアにはプーチン大統領に代わって国を統治しうる政治勢力は存在しないと言われている。プーチン体制が瓦解すれば、内戦を含む政治的混乱の中から民族主義的な勢力が台頭するリスクも指摘されている。

 経済力は衰えたものの、ロシアは世界最大の領土と約4500発の核兵器を擁する軍事大国だ。プーチン後のロシアの秩序構築に失敗すれば、ユーラシア大陸が大動乱となるのは必至だが、米国にとっては「対岸の火事」なのかもしれない。

 プーチン大統領は既に核兵器の使用をちらつかせており、「戦闘が長期化すれば戦術核兵器が使われるのではないか」と懸念されている。そうなれば「第3次世界大戦」という最悪の展開となり、米国にとっても「死活問題」になるはずだ。

 米国は21世紀に入り、アフガニスタンやイラクなどで長期にわたり戦争を繰り広げてきたが、これにより安定した国際秩序が構築できたとはお世辞にも言えない。「世界一の軍事大国である米国自身が侵攻されるリスクがないから、戦争の失敗を繰り返す」との嘆き節が聞こえてくる。

 ウクライナ危機は既に世界全体に深刻な悪影響を及ぼしている。国際社会は「ロシア憎し」の衝動でひた走る米国に対して、ウクライナ危機の現実的な落としどころを見定めるよう、強く促すべきではないだろうか。

 中でも日本は欧州と同様、ロシアと隣国関係にある。感情的にならざるを得ない状況下でも「長期的な国益」をけっして見失ってならない。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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