千葉の盗撮事件で“証拠があるのに無罪”となった理由 犯人の肛門から取り出した“証拠”が不採用に

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 近年、性犯罪の中でも急増しているのが「盗撮」だ。スマホやビデオカメラの性能アップもあって全国で年間4千件近く起きている。ところが、それを“奨励”しかねない判決が下されたのは昨年10月のこと。千葉県で起きた盗撮事件の裁判で、証拠があるのに一部が無罪になっていたのだ。

 裁判を報じた朝日新聞(3月27日)によると、被告の男が千葉県警に現行犯逮捕されたのは2018年10月18日。男は同年3月から4回にわたって県内の民家に侵入、ビデオカメラを回し、最後の一件では逃走時に傷害事件を起こしていた。ところが逮捕の際、男はマイクロSDカードを持っておらず、県警はCT検査を実施、カードを飲み込んでいたことが判った。県警は強制採取の令状を取って男に鎮静剤を投与、肛門から内視鏡を挿入してカードを回収したという。そこには女性の入浴シーンが映っており、証拠として提出された。ところが、一審では強制採取が身体への重大な負担を伴うとし、画像が証拠不採用。起訴された4件のうち3件が無罪となった。高裁も同様の判断で、昨年10月に控訴棄却となり判決が確定した。

裁判官の対応に問題?

 元神奈川県警刑事で、犯罪ジャーナリストの小川泰平氏によると、

「私も経験がありますが、逮捕の瞬間は思わぬことが起きるものです。例えば覚醒剤事件で被疑者がパケ(覚醒剤を小分けした袋)ごと飲み込んでしまうことがある。袋が破れれば死ぬ量ですよ。だから、ベテランの刑事は逮捕より先に手を押さえてしまう。この事件では、被疑者がマイクロSDカードを飲み込むなんて警察官は予想もしていなかったのでしょう」

 ちなみに覚醒剤事件では、被疑者が採尿を拒んだ場合、カテーテルでの強制採尿が認められている。

 元東京高検検事の若狭勝弁護士が言う。

「強制採尿もそうですが、証拠を被疑者の体内から取り出す際は人権に配慮しなくてはいけません。具体的には、『身体検査令状』と『鑑定処分許可状』というのを裁判官に発付してもらいます。大抵の場合、この二つがあれば、体内から強制的に取り出した証拠でも採用されるのですが……」

 ところが、一審は令状を審査した裁判官の対応に問題があったと指摘しているという。裁判官が性犯罪を増やすなんてことにならないといいのだが。

週刊新潮 2022年4月14日号掲載

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