ラランド・ニシダが語る予備校時代の“心根が腐った”友達 クズ過ぎる二人の思い出とは
嫌いなヤツの名前は脳にこびりつく
お笑いコンビ「ラランド」でツッコミを担当するニシダさん。年に100冊の本を読む読書芸人として知られ、3月にはWeb小説サイト「カクヨム」で作家デビューも果たした彼がつづった、浪人時代に予備校で出会った同級生との思い出とは。
***
【写真11枚】カズレーザーとさらば東ブクロも? 実は「元相方」だった意外過ぎる芸人リスト
思い出は匂いに紐づく。ごく個人的な感想だ。日々雑事に追われていても、匂いをたよりに古い記憶はふとよみがえる。
今日の仕事終わり、一人で飯を食っての帰り道。飲食店が雑多に並ぶ新宿の表通りから裏道に抜ける。ゴミ袋の山積みからネズミが横切り、何処から湧き出てきたのか分からない汚水を踏まぬように歩く。排気口から吹き出す油分の混じる温風に分け入った、そのとき、その匂いで君のことを思い出した。
大学生になるはずだった2013年春。浪人生となったわたしは河合塾横浜校にいた。“早慶アドバンスコース”、私立大学志望者の中では一番レベルの高いクラスに組み分けられた。授業初日、偶然近くに座った男3人女2人でグループができた。君はその内の一人だった。失敬ながら、わたしは君の名前が思い出せない。他の3人の名前は今でもはっきり分かる。全員嫌いだったからだ。嫌いなヤツの名前は何故だか脳にこびりつく。女子が大山と村山、男は古谷。クソクソクソ、クソの3連チャン。
悪意が結んだ友情
わたしは君をひそかに気に入っていた。精神性が近しいと思えたからだ。内気で口下手だが、悪意で歪んだ視点で他人を観察していた。グループの女子、大山が3浪目だというウワサを聞いた君は体面を繕い無表情を保ってはいたが、口元のゆるみを隠しきれていなかった。君はその後すぐに大山に話しかけに行った。3浪が本当か、事実確認をし、本人から言質を取るためだ。心根が腐っている、でもそんなところがわたしと似ていて好きだった。
夏期講習の3日目、3浪大山と古谷が前日と全く同じ服装で教室にやって来て、隣同士に座り授業を受けていた。昼休み、君と二人だけで、歩いて程近いドブ川沿いにあった下品な味のスタミナ丼の店に行き、飯を食いながら、互いが心の醜さを競い合うように、大笑いで罵詈雑言を吐き合った。少しばかり大人になった今のわたしには、もはや口に出せないほど下劣な言葉だった。最後には予備校周辺のラブホテルを調べあげ、ヤツらがどこでセックスをしたかを予想した。次の授業が始まる直前、遅刻ギリギリで店を出た。
[1/2ページ]