“盟友プーチン”をようやく批判の山下泰裕全柔連会長  沈黙の理由に感じる違和感

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 今月12日、日本オリンピック委員会(JOC)と全日本柔道連盟(全柔連)の会長を兼任する、日本スポーツ界のリーダー・山下泰裕氏(64)が、柔道を通じて親交のあったロシアのプーチン大統領について、「大きく変わってしまった。まるで別人」などと会見で言及した。どこまで個人的な付き合いだったかはともかく、プーチン大統領と20年以上の親交がある山下氏は、ロシアでの世界選手権を一緒に見物するなど懇意だったとされる。さらに、日本政府のメッセージを柔道の場でプーチン大統領に直接伝える役割も果たしていた。かねて、山下氏がプーチン大統領にメッセージを出す必要性を訴えてきたバルセロナ五輪銀メダリストの溝口紀子氏は、今回の対応をどうみるのか。(粟野仁雄/ジャーナリスト)

プーチン大統領が「場合によっては激怒する話」

 2月24日にロシア軍がウクライナに侵攻した当初、記者に囲まれた山下氏は「皆さんが思っているほど(プーチン大統領と)親しいわけではない」などと発言をした。ウクライナよりロシアに加担していたというわけではないのだろうが、その後は長く沈黙していた。ロシア軍によるウクライナ市民の虐殺などが明るみに出て以降は、全柔連の内部からも、「山下会長は何らかのメッセージを出すべきでは」という声が出ていたという。

 今月12日の会見では「一人間、一柔道家として」と断った上で、「今思えば、効果がなくてももっと早くメッセージを出すべきであった。自分のかたくなさ、未熟さがあった」として正直に対応の遅さを認めた。そして「ロシアのウクライナ侵攻に心を痛めていた人間の1人。この行為は決して許されるべきものではなく、1日も早く侵攻が止むことを願っている」と語った。

 これより先、11日に、山下氏は個人のHPで「ウクライナの人々、そして世界中の柔道を愛する方々へ」と題した声明を英訳もつけて発信していた。その中で「連日メディアで報道されるウクライナにおける非人道的な行いの数々、柔道家であるプーチン大統領によるロシア軍の侵攻のニュースを聞くにつけ、心を痛めてきました。これらの行為は柔道の精神、目的に完全に反するものです。全く容認することは出来ません」などとしていた。

 これを知った報道陣の求めで開いた会見で、山下氏は長く沈黙していた理由については「国際政治は専門外で首を突っ込むべきでないと思っていた」とし、「自分のメッセージに戦争を抑止する効果はないと思っていた」「今はウクライナ難民支援に注力すべきだと思っていた」などと説明した。気持ちが変化した理由として「大量虐殺や非人道的な行いに報道で接し、効果がなくても一柔道家としてメッセージを出すべきだと思った」とした。そして「これはプーチン大統領が喜ぶニュースではなく、不快になる、場合によっては激怒する話。彼の元に届くことはないかと思うが、届いてくれたらありがたい」と話していた。

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