おぎやはぎ、設楽統、藤井隆…「元サラリーマン芸人」はなぜ強い? 業界に期待しすぎない“低温”の安心感

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「あさイチ」大吉先生も……裏方経験と“偉大な相方”によって養われた冷静すぎるバランス感覚と警戒心

「あさイチ」の博多大吉さんも、ディレクター的な仕事や音響係として舞台を支えていた時期があるという。裏方にいたからこそ、お笑いの「間」だけは叩き込まれたとエッセイにつづっているが、スタッフの苦労するポイントもわかるのだろう。男尊女卑的な失言もあったものの、気配りの人だと業界内外から評判である。母親の言葉に心を痛めていた女性の投稿に対し、「番組で紹介されて呪いは解けたということで、お幸せに」と進行をいったん止めてまでエールを送った回は話題になった。

 設楽さんや大吉さんには、“偉大な相方”がいるという共通点もある。自分よりもインパクトのある風貌や舞台映えするキャラ、つまり「芸能人向き」の相方を持っている現実は、より自分が普通であるとの自覚を強めたのではないだろうか。少し前までは「じゃない方芸人」として名前の挙がるタイプだった。だから人気によって態度を変える人間の多さもよくわかったはずだ。実際に大吉先生は、「チヤホヤされても全く信用しない」とインタビューで語っている。安定した人気はスキャンダルが出ないから、というのもあるが、裏を返せば自分を過大評価しすぎない自覚ゆえに、うまい話や怪しい人脈に対する警戒心が強い人といえるのではないだろうか。

「新婚さん」司会の藤井隆さんら「上品芸人」の天下とワイドショーの低体温化

 社会人経験のある芸人といえば、「新婚さんいらっしゃい!」の司会に抜擢された藤井隆さん抜きには語れない。彼もまた普段は物静かで、後輩芸人の礼儀にも厳しい一面があるという。イイ車に乗ってイイ女を抱くのが夢、と公言する吉本芸人たちの中では異色の存在である。しかし今や、女遊びや乱痴気騒ぎを大声で語る芸人の方が笑えないと敬遠される。スタッフの気苦労にも理解があり、自分の機嫌は自分で取る、藤井さんや大吉先生のような「上品芸人」の時代が来ている。

 といっても彼らが愛されるのは、弾けるときはきちんと弾けるからだろう。自分が何をすべきか、あるいは何をしない方がいいのか、全体を見て把握する観察眼と行動力。まさに企業人的な能力が問われ、ある意味で予定調和が求められる。ワイドショーに限らず、テレビショーの低体温化は避けられないのかもしれない。

 業界にも世間にも自分にも、クールな距離感を保ちつつ活躍し続ける元サラリーマン芸人たち。テレビ氷河期時代にあって、彼らの冷たさは氷のように、きらきらと光を放っている。

冨士海ネコ

デイリー新潮編集部

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