橋下徹らの「ウクライナ降伏論」への反論 ロシアに祖国の一部を侵略された専門家の証言

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 スピルバーグの映画「ターミナル」は、トム・ハンクス扮する東欧の旅行客がNYの空港に降り立つ場面から始まる。序盤、入国審査の段になり、信じられない出来事が彼を襲う。母国が突如、有事によって消失したと知らされるのだ。

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 祖国のありがたみは、この映画の主人公がそうであるように、失って初めて分かるのかもしれない。

 翻ってわが国において、有識者たちがウクライナに対し、賢(さか)しらに“降伏論”を唱える状況はどうなのか。

 特に喧(かまびす)しいのが二人の「徹」である。

〈どこかでウクライナが退く以外に市民の死者が増えていくのは止められない〉(玉川徹・テレ朝系「モーニングショー」3月4日)

〈戦術核の利用もあり得るという前提で、もう政治的妥協の局面だと思います〉(橋下徹・フジ系「めざまし8」3月21日)

降伏しても「平和が得られるわけではない」

 ウクライナに「退け」「妥協せよ」と言うのだが、現実に国土を蹂躙された経験を持つ国民ならば意見を異にするのではあるまいか。

 慶応義塾大学SFC研究所上席所員のダヴィド・ゴギナシュヴィリ氏の故国ジョージア(旧称グルジア)は2008年に、領土の一部、南オセチア自治州をロシアに侵略された。氏が語る話こそは傾聴に値するだろう。

「ウクライナがロシアよりも先に手を挙げて“はい、戦争止めます”と言ったって、それで平和が得られるわけではないと思います」

 理由は明白だ。

「南オセチアで何が起きたか見てください。我々は国際社会の仲介で、ロシアと停戦合意をしました。合意案には、ロシア軍の撤退が明記されていたのに、あの国は約束を破り、そのまま居座ってしまったのです」

 結果は案の定だった。

「南オセチアは非常に悲惨な状況に置かれています。統治が行き届いておらず、街のいたるところで麻薬が売買され、誘拐も頻発している。毎日のように人権が蹂躙されているのです。平和とはほど遠い状況です」

 時に妥協は悲劇を生む。こうした事例を踏まえれば、嘘つきロシアに対する降伏など考慮の外と言うべきか。

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