京都国際の出場辞退、「長すぎる開会式の挨拶」でトラブルも…センバツで問われる問題点

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担架で運び出される事態

 コロナ禍での大会を象徴するような出来事は開会式でも起きた。

 感染対策のため、開会式に参加したのは、初日に試合のある6校だけだったが、末松信介文部科学大臣の「お祝いのことば」が終わったタイミングで、倉敷工の背番号11をつけた菊井颯選手が体調不良から倒れ込み、担架で運び出される事態となったのだ。

 現地でその光景を目の当たりにしたが、別の来賓の挨拶が続くなか、5人の関係者によって、菊井選手が運び出される様子に他校の選手も心配そうな表情を浮かべていた。

 幸い大事には至らず、すぐに回復し、第2試合では元気な姿(試合は未出場)を見せていたが、これがもし第1試合にスタメンで出場予定の選手だったら、試合に与える影響も大きかったはずだ。

挨拶で13分遅れた試合開始

 今年に限ったことではないが、開会式での挨拶の類は数分間に渡ることが多く、それを普段慣れない環境で大観衆の視線を受けながら立ったまま聞き続ける選手への負担は決して小さくない。以前もプラカードを持つ女子生徒が体調不良を訴えて退場し、地方大会でも審判員が運ばれた例があった。

 実際、今大会も挨拶の時間が長かった影響で、第1試合の開始時間は予定よりも13分遅れる結果となっている。伝統に則った形式や挨拶も大事なのかもしれないが、感染対策であらゆる苦労をしていながら、プレーに関係のない中で体調を崩す選手が出てきては“本末転倒”である。夏の甲子園では、炎天下で選手への負担はさらに大きくなることを考えても、このあたりは改善を検討すべきだろう。

 今大会は2年ぶりにブラスバンドによる応援が復活し、第2試合では1万2000人の観客が詰めかけるなど、かつての甲子園に賑わいが戻ってきた印象を受ける。ただし、今回取り上げた点以外にも、まだまだ改善すべき問題点は多いように感じられる。まずは今大会が無事に終わることを祈りながら、今後も選手が持てる力を存分に発揮できるような大会運営となっていくことを望みたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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