#野田聖子ブロック祭りの顛末 子育て世代猛反発で問われる覚悟

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国民の声が「心ない発言」「誹謗中傷」に

 そうした中、2月17日にネットのABEMAチャンネルは「変わる報道番組#アベプラ」で、野田氏の“ブロック問題”を取り上げた。野田氏の事務所はその中で、ブロックに及んだ理由を次のように説明している。

・政策とは関係なく心ない投稿をしたユーザーをブロックした
・所得制限撤廃などの内容を問題にしたのではない
・ブロックは秘書・スタッフの判断による
・心ない投稿を衆目にさらさないようにする目的があった
・政策提言などにはしっかり耳を傾けており、「嫌なことでもしっかり受け止める」というスタンスは変わらない。

 政策とは無関係な「心ない」投稿をブロックしただけだ、というのだ。さらに番組では、投稿があたかも誹謗中傷であったかのように位置づけられて話が進行。野田氏の弁が正論のように印象づけられる形で終わってしまった。

 同番組に出演した明石市長もこれには困惑の色を隠さなかった。以下はツイッターから。

〈今夜の『アベプラ』は予想外の展開でした。誹謗中傷された被害者のブロックなら、気の毒で、政策提案なのにブロックしてしまう大臣なら、無責任。誹謗中傷を前提とした出演者ばかりだと、結論は明らか。番組内容に失望した皆さん、私の力不足もあり、議論を修正できず、申し訳ありませんでした〉

 しかし、これは泉氏の責任なのだろうか。野田氏と、この日の番組に関わった制作陣にこそ問題があるのではないか。

 そもそも、どういったツイッターを野田氏は「心ない」と判断したのか、さかのぼって調べてみた。

〈子どもに対する理不尽な差別に、我慢の限界です〉
〈訴えても野田さんには届かないのでしょうか〉
〈誰1人取り残さず、抜け落ちることのない支援ということは、私たち所得制限世帯の子どもたちも支援の輪に入れてもらえるんでしょうか〉
〈子どもに少しでも良い暮らし、生活をさせてあげたくて一生懸命働いただけで、制限されるって納得いかない〉
〈楽して稼いでるわけじゃありません。相応の税金も納めているのに恩恵受けられないことがおかしいのでは〉

自身はベビーシッターに「月50万円」

 中には、誹謗中傷めいた投稿もあったのかもしれない。しかし、至極真っ当なコメントまでがブロックされていた事実がわかったのだ。これでは、泉氏から「子育て層の生の声をブロックしていて、少子化担当大臣が務まるわけがない」と非難されたことに、野田氏として反論の余地もないだろう。

 所得制限の撤廃を求める声が上がった児童手当は「こども家庭庁」の所管になることが決まっている。野田氏が「こども家庭庁では、誰一人残さず」と言明している以上、児童手当の行く末に関する国民からの要望をブロックするのは不当である。いや、国民から発せられた言葉を「ブロックしない」とした自身の言明を裏切ったものともいえる。これはある意味、河野太郎氏より酷いとは言えまいか。

 野田氏は仕事を持つ母として、障害のある長男の預け先を探したが、なかなか見つからなかった。そこで看護師に来てもらってベビーシッターをお願いし、これに月50万円かかったという話がある。他ならぬ私にも障害を抱えた子がいる。せめて野田氏は障害児がいる家庭における親の就労の難しさ、経済的状況の厳しさを理解してくれているかと思ったら、残念だがまったくそうではなかったらしい。

 私は再度、事務所に確認取材を行った。しかし、十分すぎるほどの回答期限を設けていたのに、前回と同じく「秘書の判断でブロックしました」と答えるのみで、所得制限撤廃の件や児童手当の所管の件、ベビーシッターに50万円支出していた件などについては一切、無回答だった。

 昨年、医療的ケア児法が施行された際、野田氏が先導して議員立法を可決させたように喧伝されていた。しかしあの法律は、元民主党議員の荒井聡氏が障害児の置かれている状況を目の当たりにし、改善に向けた取り組みを始めたのが端緒となったものだ。無論、野田氏のパフォーマンスが成立に資した面も否定できないが、このたびのブロック騒動を見るにつけ、自身には改革に取り組んだり、環境整備に努めたりるする気などないのではないかとさえ思えてくる。

 質問状では「野田議員の思い、考え、母親として、議員として、大臣としての声を届けたい」といった主旨を伝えた。にもかかわらず、国民にメッセージを届ける機会までも自らブロックした。信頼感が著しく損なわれた今般のネットでの騒動を、野田氏は軽く考えるべきではない。

中西美穂(なかにしみほ)
ジャーナリスト。1980年生まれ。元週刊誌記者。不妊治療で授かった双子の次男に障害が見つかる。自身の経験を活かし、生殖医療、妊娠、出産、育児などの話題を中心に取材活動をしている。障害児を持つオンラインコミュニティ・サードプレイスを運営。

デイリー新潮編集部

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