オリックス、悲願の日本一へ…“勝負の17年目”T-岡田が見せた「進化の証」

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「シンプルにしようと」

 その長い蓄積をベースに、この日の打撃練習を見ていて、ぱっと感じたことがあった。

 今年は、変わったぞ-。そう感じた直後に、その当人に会えた。疑問を解く絶好の機会を生かさない手はない。

「ちょっと、変わったね。シンプルになった気がするんだけど?」

 そう話しかけると、T-岡田の足が止まった。

「難しくしようと思ったら、バッティングって、いくらでも難しくできてしまいますからね。だから、シンプルにしようと思っているんです」

 打席に入ると、まず投手側に向かってバットの先を振り出していく。そこから、半円を描いたバットの先が、ネット裏から見ると、時計の「1時」の角度のところへ、すっと落ち着いていく。

「あれ?」と思ったのは、その時だった。左耳の前で、グリップが止まる。それから、バットの先がほとんど動かない。「静」の姿勢で、じっと投球を待っている。

「“タイミングベタ”なんよ」

 これまでのT―岡田は、「タイミングの取り方」に悩み続けてきたキャリアともいえる。プロ5年目、初の本塁打王を獲得した2010年も、開幕直後の1カ月は不振に苦しんだ。

「“タイミングベタ”なんよ」と評したのは、当時の岡田彰布監督だった。

 その指揮官が、右足を上げない「ノーステップ」での打法への切り替えを命じたのは、下半身の動きによって生じるパワーを減らしてでも、足の上げ下げという“余分な動き”を抑え、タイミングを取ることに集中することが一つの狙いだった。

 その大変身が、功を奏したのは確かだ。しかし、翌2011年に導入された「低反発球」のせいで飛距離が伸びなくなり、T-岡田の持ち味が失せていく。その後は、毎年のように打撃フォームが変わっていく。

 一度上げた右足のつま先を地面につけ、そこから「すり足」で引いていくという“二段階タイミング”の時もあれば、右膝を左太ももの真ん中辺りまで上げていく「1本足」の時もあり、体の前、背中側へとバットのヘッドを動かしながら、相手投手の投球のタイミングを計るという時もあった。

 小刻みな「動」の中でタイミングを取ってきたのだ。それが、17年目の今季は、その“動き”が実に少ないのだ。どっしりと見える。余分な動作がそぎ落とされたルーティンになっていた。

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