武田塾社長の「ポーカー賭博」で警察が動く可能性はあるのか…「黒川麻雀」との違いは?

  • ブックマーク

Advertisement

 人気YouTube番組「令和の虎」の出演者らが、高額の賭けポーカーに興じていた問題がネット上で話題になっている。SNS上で証拠の「収支表」が暴露されると、参加していた学習塾「武田塾」代表の林尚弘氏が、事実を認めて社長を辞任する事態に発展。ほかにも人気YouTuberが謝罪に追い込まれるなど騒ぎは拡大しているが、果たして警察当局が参加者たちを立件する可能性はあるのだろうか。「渥美坂井法律事務所弁護士法人 麹町オフィス」代表の渥美陽子弁護士に話を聞いた。【「コスプレ弁護士」の法律相談所】

 ***

テンピン麻雀はアウト

 パチンコや麻雀をしたことがない人でも、友達や家族とジュース代やランチ代を賭けてゲームをしたことがある人は多いでしょう。ただし、その場だけで消費されるようなお菓子などの賭けについて、罪に問われることはありません。賭博罪では「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない」と定められているからです。逆に、少額であっても金銭が動く場合は、原則として賭博罪が成立するとされています。今回の賭けポーカーで、参加者たちは金銭を賭けていたことを認めており、賭博罪が成立する可能性が高いといえるでしょう。

 では、実際に同罪で立件されるかどうかですが、賭けていた「金額」が重要なポイントとなってきます。ここで比較対象としたいのが、黒川弘務・前東京高検検事長が新聞記者らと興じていた「テンピン麻雀」です。2021年4月、東京地検特捜部は検察審査会が起訴相当と議決したことを受け、黒川氏を略式起訴し、罰金20万円の略式命令を出しました。

 テンピン麻雀で動く金額は一回のゲームで数千円程度、一晩を通してでも2~3万円程度とされています。これまでは、街中の雀荘でテンピンの賭け麻雀をしていても、警察から取り締まられることは事実上ありませんでした。なぜかといえば、庶民が娯楽で興じている範疇の賭博を、いちいち取り締まっていてはキリがなかったからです。

常習賭博罪、賭博開帳図利罪の可能性

 私はこのような運用方法には、疑問を持っています。本来、違反したら同じように罰せられるのが法律のあるべき姿ですが、ハードルを低く設けておいて、だいたいは見逃しているけれど、この人だけには刑事罰を科すというのは、国家権力による恣意的な処罰を許すことにもなりかねません。

 それはさておき、「テンピン麻雀」でも罪に問われる前例が出来てしまったわけです。SNS上で出回っている賭けポーカーの収支表を見ると、林社長は一カ月で68万1600円も負けたとあります。黒川麻雀をはるかに上回る高額な金銭が動いていたことは一目瞭然であり、警察が捜査を開始する可能性は十分あるでしょう。しかも、本人たちが賭博を行ったことを認めているので、立件するにあたってのハードルは低い。参加者のYouTuberは「昨年の秋くらいから10回以上」とまで発言しています。単純賭博罪(50万円以下の罰金又は科料)ではなく、より法定刑の重い常習賭博罪(3年以下の懲役)が適用される可能性も考えられます。

 闇カジノのように、主催者が営利目的で行っていた可能性があれば、賭博開帳図利罪(3ヶ月以上5年以下の懲役)というもっと重い罪名が適用されるかもしれません。収支表の末尾にはディーラーに多い時で13万3800円も支払われていると記載されており、主催者側が参会者から参加費や勝ち額の一部を徴収するかたちで利益を得ていた可能性も考えられます。

次ページ:議論が必要

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。