藤澤五月の劇的ショットを成功させたチーム力 じんわり理解できた吉田知那美の言葉

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難敵は「氷」

 試合後、セカンドの鈴木夕湖が大きな瞳から涙を流す光景があった。最終10エンドの8投目、勝利をたぐりよせる見事なショットを決めた鈴木だが、ミスショットが続き、苦しんだ。試合全体のショット率66パーセント。だがその要因は、鈴木の不調というより、「読みにくい氷」にあった。真っ先に涙する鈴木を抱きしめたリード吉田夕梨花は言った。

「試合に勝ったというよりはアイスに勝ったというか、今まででいちばん難しかった」

 難敵はROC以上に「氷」だったのだ。

「つかみどころのないアイスでした。気合で押し切りました」(吉田知那美)

「今日のアイスがいちばん難しかったけど、しっかり攻略できるように、みんなで試行錯誤しながら戦いました」(藤澤)

 鈴木のもとに吉田知那美、藤澤も加わって円になり、全員で涙を流した。試合後のインタビューで鈴木はこう言った。

「ショットが決まらなくて本当に辛かったんですけど、みんなが助けてくれて、本当にみんなに感謝したいです」

 闘う相手は対戦チームだけではない。カーリングは、氷とストーンと自分たち自身との闘い。

 4試合を終えて日本は3勝1敗(2月12日現在)。アメリカと並んで2位につけている。1位は4戦全勝のカナダ。上位4チームが決勝トーナメントに進む。まだまったく予断を許さない。だが、銅メダルを獲った4年前(平昌五輪)以上のチーム力、明確なビジョンを携えて北京五輪を戦っていることは、これまでの4戦ではっきりと見せてくれている。

小林信也(こばやし・のぶや)
1956年新潟県長岡市生まれ。高校まで野球部で投手。慶應大学法学部卒。大学ではフリスビーに熱中し、日本代表として世界選手権出場。ディスクゴルフ日本選手権優勝。「ナンバー」編集部等を経て独立。『高校野球が危ない!』『長嶋茂雄 永遠伝説』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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