「1億貯めた人の飲食店づくり」お金が貯まらない人にはまず見えない“ある発想”

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一方、お金が貯まっていない人は…

 対して、お金が貯まっていない人の開きたい店舗だ。

「個室でゆっくりでき、幅広いメニューを用意する、インターネット、電源付きで一人の時間を自由に過ごせる空間づくりに努めたい。」(30代・男性)

「大手フランチャイズに加入して、手堅く稼げる種類の飲食店を開きます。」(40代・男性)

「隠れ家的な喫茶店。細々と客足が途絶えない程度でいい。居心地のいい空間で食べるモーニング350円。」(30代・女性)

「収入の少ない人を金銭的にかなり優遇するような飲食店にしたいです。」(50代・男性)

「ボリューム満点でお得感満載の地元に愛される喫茶店をやってみたい。」(30代・男性)

「田舎のさびれてしまった商店街を活用して、若者から老人まで気軽に通える定食屋をやりたいと思います。」(20代・男性)

 お金が貯まっていない人の飲食店は、1億貯めた人のように、きちんとコスト管理をしようという決意がみられる回答も中にはあるものの、大半は、「夢物語」のようなものを開店させようとしている印象を受ける。

 たしかに、ボリュームがあって、美味しくて、安くて、居心地もよく、地域に喜ばれる店があったら、私も入ってみたいが、実際に、そんなカフェや飲食店をつくるのは、ほんとうに難しい。

 イタリアンレストランチェーン「サイゼリヤ」の創業者正垣泰彦氏は、お値打ちな料理を出す店は、価格が安いのではなく、「この値段ならこれぐらいの品質だろう」という消費者の予測を上回っていることの大切さを繰り返し指摘している。正垣氏は、サイゼリヤを大きくしていくに当たって、マクドナルドに何百回と通い、「商品」「立地」「設備」「作業」について、それぞれ100項目ずつ分析。どうやってマクドナルドが収益を上げているのかを徹底的に調査したのだ。

 その執念が、これから漠然と飲食店を開きたいという人間にあるのか。一生を台無しにしかねない人生の大事な決断は、きちんとした計算にもとづくものでなくてはダメだ。そのためには目標とする店舗を定め、毎日のように通ってどん欲に繁盛店の秘訣を収集する必要がある。

 ここまで脅してしまうと、飲食店での独立に躊躇をしてしまう人もいるかも知れないが、それは私の本意ではない。世界最大のファストフードチェーン「マクドナルドコーポレーション」創業者レイ・クロックが、マクドナルドの前身となる「マクドナルドシステム」を立ち上げたのは、1955年で、レイ・クロックが52歳のときだ。それまでは、うだつのあがらないミキサーのセールスマンだった。

 人生に遅いということはないという確かな教訓であろう。コロナ禍で、飲食店を先に開業しているライバルたちにピンチがやってきた。虎視眈々と開業を狙うというのは、「あり」だと思う。

小倉健一(おぐら・けんいち)
イトモス研究所所長。1979年生まれ。京都大学経済学部卒。国会議員秘書からプレジデント社入社。プレジデント編集長を経て2021年7月に独立。

デイリー新潮編集部

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