重症化率、経口薬の確保数、病床の余裕は? オミクロン株の疑問を専門家が徹底解説

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感染力はデルタ株の3倍?

 Q.感染力はデルタ株の何倍なのか?

 東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授は、

「概ねデルタ株の3倍と考えていいのではないか」

 と言い、続ける。

「なぜ感染しやすいかですが、オミクロン株にはヒトの細胞にくっつきやすい特性があること、また、肺よりも鼻の細胞につきやすい可能性があることが挙げられます。身体の奥深くよりも、表面に近いところで増殖しやすければ、体外に多くのウイルスを出しやすいわけです」

 だが、東京農工大学農学部附属感染症未来疫学研究センター長の水谷哲也教授の話にも耳を傾けたい。

「現状のデータを見るかぎり、オミクロン株の感染力はデルタ株の3~5倍程度と考えるのが妥当だと思います。しかし、その数字自体に大きな意味はありません。国や地域、個人ごとのワクチン接種状況や感染予防対策の度合い、人口および対人交流密度などの要因によって、実際の感染リスクは変わってくるからです。感染力という数字だけを見て、過度に恐れる必要はないと考えます」

 Q.空気感染力が増したのだろうか?

 浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫医師は、こう説明する。

「エアロゾル感染は認められても、空気感染はないと思います。エアロゾル感染が、同じ部屋にいてうつることを示す一方、空気感染は、空気中に浮遊しながらも強い感染力を保ち、隣の部屋にいても感染するほど、タフなウイルスであることを意味します。とはいえ結核、麻疹(はしか)、水疱瘡の三つが指定されているのみで、オミクロン株にそこまでの感染力はないと思います」

 ただし、寺嶋教授はこう付け加える。

「以前は密な空間に30分いたら感染したとして、オミクロン株では、たとえば10分で感染するといった状況が考えられます」

マスクは着用の仕方がポイント

 Q.特にどういう場所で感染しやすいのか?

 愛知医科大学病院循環器内科の後藤礼司医師が言う。

「オミクロン株も、あくまでも新型コロナウイルスの変異株ですから、以前と変わらず3密空間です。風邪もインフルエンザも同様です。しっかり換気することが重要ですが、それができている空間はいま、かなり少なくなっています。冬は寒いので、ずっと窓を開けている飲食店はほとんどなく、1時間に1回の換気も行われにくい。冬にウイルスが流行しやすいのは、空気の乾燥のほかに、こういった理由もあるのです」

 むろん、感染力の高さも考慮に入れておいたほうがよさそうで、埼玉医科大学の松井政則准教授は、

「条件にもよりますが、電車などで感染者がくしゃみをしたら、その車両の人にはうつってしまうでしょう。現在、無症状の人も相当いるはずで、国内の感染者数は、公表されているよりもずっと多いはずです」

 と話す。リスクが広く分布しているようだが、どうすればいいか。東京都医師会の角田徹副会長は、

「飛沫感染が主なので、東京都医師会としても、個人レベルで感染対策を、いままで以上にしていただく必要があると考えています」

 と訴える。その際、最も有効とされるのはマスクの着用だと思われるが、

 Q.ウイルスがマスクを通過したりしないか?

「オミクロン株は、ウイルスがより小さくなったわけではないので、マスクを通りやすくなったということはありません」

 と寺嶋教授。ただし、注意事項を矢野医師から。

「重要なのは着け方。ウイルスはマスクと顔のわずかなすき間から漏れ、侵入もするので、顔とマスクのすき間をできるだけ埋めることが重要です。きちんと着用すれば感染予防効果が非常に高いのは、オミクロン株に対しても同じです」

 また、松井准教授は、

「ウレタンや布製のマスクではダメ。不織布のものが効果は一番高いことがハッキリしています」

 と加える。しかし、後藤医師によれば、

「クリスマス時期や年末年始、感染者が少なくなっていたときは、ウレタンや布のマスクがかなり増えていました」

 マスク着用の仕方は、見直したほうがよさそうだ。

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