「MVPは宮本浩次」「氷川きよしもよかった」吉田潮の紅白歌合戦振り返り

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 13年ぶりにテレビを新調、65インチを買った。これで「紅白歌合戦」の舞台を隅々まで観察できる。微妙にダサいライブエンターテインメントを意地悪に書きまくろうと思っていたのだが、今回ホメどころが多かった。

 私の人生で初めてNHKホールではない会場、それが東京国際フォーラム。舞台を観に行ったことがあるが、広くて美しくて、観客の動線を計算した良質の劇場だ。ステージには多種多彩な花と植物が盛られ、息を呑んだ。目に飛び込んでくる色が超極彩色。今回のテーマ「カラフル」を見事に表現。また、会場の外廊下の長さや高さ、ガラス張りを活かしたステージづくりも思いのほか良かった。いつもの「舞台上に人数集めるだけ集めて押し切るイナバの物置方式の紅白」ではなかった。ハードはめちゃいい。肝心の歌合戦は……?

 おそらく全国で大晦日ほどこの言葉が発せられる夜はないと思う。「これ誰?」あるいは「なんて読むの?」。

 高齢者は特にそう。アニメとゲームとネットの国から人気の人やコンテンツを集め始めたら、そりゃ年寄りはようついていかんわ。でも、これが今の日本の主流。メインカルチャー。途中で痛感した。生まれる国を間違えてきちゃったなぁと。

 ただ、ドラマの主題歌はわかる。読み方がわからなくても顔を知らなくても、歌だけはわかる。DISH//もmiletも、あいみょんも藤井風(かぜ)も、民放局のドラマで知った。そもそもこの人々はホンモノ。歌声も曲もいいし、うっとりできる。毎朝聴いていたBUMP OF CHICKENも、毎朝聴いているAIも。ドラマを観ているだけで紅白を楽しめると改めて思う。

 そして毎年の楽しみといえば、氷川きよし(kiina)がどれだけ解放されたか確認すること。男らしさを要求され続けた彼が本当に歌いたい歌を着たい衣装で歌えるかどうか。うん、今回はよかった。「少しずつお仕事でも自分を出せるような感じになってきて」。美空ひばりも空から見守ってくれているはずよ。あとは、三山ひろしのけん玉な。メディアの扱いも、もはや歌手ではなくアスリートだ。

 思わず口ずさんだのは鈴木雅之の「め組のひと」。この曲のドーナツ盤を買いにセブン-イレブンへ走った11歳の頃を思い出す。38年前!!

 思わず爆笑したのは「お転婆なプリンセス」っつう歌詞。若い人に人気だそうで。お転婆……プリンセス……死語やこっ恥ずかしい言葉も1周回って新しくなる時代ね。細川たかしはノーベルの男梅にしか見えず。

 そうそう、大画面で観ると、口パクが余計に気になっちゃってね。49組中推定10組が口パク。超高音で歌うフリが頗(すこぶ)る上手なマガイモノも出てきたし。その分、後半は2曲歌える歌手も増えたので、そこはNHKの最後の良心だと思うことに。

 MVPは宮本浩次。寒空の下、船上で海風に吹かれても変わらぬ歌声で熱唱した強靭さ、寒さを愚痴らず、逆に感謝を述べた謙虚さ。

 最後。最近のアーティストは衣装がシンプル、つうか普段着。Tシャツに家着。ホンモノの歌は着飾らなくてもいいってことなのかな。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2022年1月13日号掲載

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