「水谷豊」独占80分 松田優作との思い出、「相棒」の舞台裏、体力維持と老いを語る

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水谷の娘も芸能の道へ

 豊ちゃんの長女・趣里さんも、芸能の道を選んだ。

 菅田将暉と共演した「生きてるだけで、愛。」(関根光才監督・18年)で、彼女は感情のコントロールがうまくいかず、エキセントリックな言動を繰り返す難しい役を見事に演じていた。

「ずっとこっちの世界には来ないように言ってたんですよ。娘が幼い時から。僕も蘭さんも、今こうしていられるのはたまたまで、偶然こうなれた。だから子供にはもっと確実な道を行ってほしいと思ったのね。この世界って、天国と地獄を見なきゃいけないでしょ。わざわざそこへ行ってほしいとは思わない」

 豊ちゃんの心配をよそに、彼女は先の映画で高崎映画祭最優秀主演女優賞、おおさかシネマフェスティバル主演女優賞などを受賞。その演技力を広く認められた。

「今は本人の自由に、好きにやってもらっています」

 趣里さんは映画、テレビだけでなく、舞台でも活躍中だ。

2本の映画を監督

 豊ちゃんも活躍の場をさらに広げている。映画監督というキャメラの向こうの仕事である。すでに「TAP THE LAST SHOW」(17年)、「轢き逃げ 最高の最悪な日」(19年)の2本を監督している。

「TAP」は構想40年、20代の頃、ブロードウェイでタップダンスのショーを観たとき、別世界に連れていかれたような気持ちになり、いつか、この感動をお客さんに伝えられる映画を作りたいと考えるようになった。

「まだ信用がなくて、監督だけというわけにはいきませんけど」

 豊ちゃんは監督と同時に、足の怪我で踊れなくなった元タップダンサーを演じている。熱い撮影現場だったのだろう、ステージのシーンが圧巻で、映画を観終わっても、しばらくはタップの音が耳から離れなかった。

「そう、それがやりたかったんです」

「轢き逃げ」で演じたのは、愛娘を轢き逃げされた父親の役で、全身から虚脱感が漂う。娘という生き甲斐を無くした人間が、それでも真実を求めて必死に動き回る姿は胸を打つ。

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