「カラオケで本当に好きな曲が歌えなかった」 作家・君嶋彼方を変えた大学時代のサークルでの出会い

エンタメ

  • ブックマーク

Advertisement

当時聴いた音楽の歌詞が現在の創作活動に

 同時に、彼らが歌っている曲に興味を覚え、たくさんの音楽を教わった。一世代前のミュージシャンやアングラなロックバンドまで、さまざまなジャンルの音を耳に流し込む日々だった。人生の中で一番いろんなものを吸収した時期だったと思う。このとき頭を駆け巡った音に載せられた歌詞が、現在の創作活動において大きく影響を及ぼしているのは間違いない。

 社会人になり、付き合いなどでカラオケに行く機会が増えた。そこではやはり自分の好きな曲を堂々と歌うことはできないが、それでも友人たちと行くときは、またこんな曲歌ってと苦笑されながらも気持ちよく歌わせてもらっている。

 敬愛している大森靖子の「みっくしゅじゅーちゅ」という曲の歌い出しに、こんな歌詞がある。

「思い切ってカラオケでリアルに聴いてる曲入れた 引かれるかも でもそろそろ知ってほしい ほんとうは」

 自分にとって音楽とは、相手との距離を測る指針のようなものにもなっている。好きなものを好きだと胸を張って言える。そんな相手となら、堂々と声を張り上げて歌うことができるのだ。

君嶋彼方(きみじま・かなた)
1989年東京生まれ。2021年に第12回小説野性時代新人賞を受賞。『君の顔では泣けない』でデビュー。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。