「アベノマスク」検品経費21億円、保管費用6億円で蒸し返される「受注会社」の“恥ずかしい過去”

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8000万枚が残り、15%が不良品

 新型コロナの流行初期、安倍晋三首相(当時)の振る舞い、政策が世間の反感を買っていたことがある。星野源の「うちで踊ろう」動画とのコラボあたりは単なる「炎上」案件だろうが、全世帯に2枚配布された「アベノマスク」は、今となっては失敗例と言えるだろう。熱心な支持者たちは、あのマスクがあったからこそマスク市場が落ち着いたという立場に立つのだが、少なくとも現状、政府にとっては完全な「負の遺産」と化しているのは厳然たる事実。ここにきて、行き場を失ったアベノマスク8000万枚以上が依然として倉庫に眠り、保管費用だけで6億円を超えていることがわかった(2020年4月28日の記事に加筆・修正を施しています)。

 もはや国民は忘れかけていた「アベノマスク」問題だが、発注当初から問題がいろいろと指摘されていた。そのうちの一つは受注会社の素性である。有名商社と並んで、一般的にはまったく知られていない企業が突如、アベノマスク受注に成功していたのだ。

 アベノマスクは約2億9000万枚が調達されたが、マスクの品薄状態が解消されたこともあって約8000万枚が行き場を失った。そこから今年3月までの保管費用は約6億円で、今年度も3億円を超える見込みだという。

「初めて聞きました」

 厚労省が在庫のうち7100万枚の検品を実施したところ、約15%が不良品であったことも岸田文雄首相が明らかにしている。首相は一連の検品費用に、総額で約21億円が費やされたとも説明。その内訳は厚労相による検品費用に約6億9200万円、納入事業者が実施した検品費用に約10億7000万円、検品に時間を要したために発生した追加費用に約3億3000万円だという。引き取り手がないまま保管費用だけがかさんでおり、費用対効果の観点から今年度中に廃棄される予定だ。もちろん、廃棄にも経費がかかる。

 アベノマスクをめぐっては、超特急でカネに糸目をつけず国内外問わず集めまくったため、カビが生えていることが確認されるなど、当初からつまづきが目立った。受注先に関しても興和、伊藤忠、マツオカコーポレーションまでは公表されたが、4番目、5番目の会社がなかなか判然としなかった。

 2020年4月28日に開かれた、新型コロナウイルス対策などに関連する補正予算案を審議する衆院予算員会。立憲民主の大串博志議員は加藤勝信厚労相を相手に、政府からの発注時点で4番目の受注業者であるA社の定款には「布マスク」に関連する記述がなかったこと、かつ「随意契約」であることについて質していた。

 その質疑の課程で、加藤厚労相からはこんな答えが飛び出した。

「輸出入をするもうひとつの会社と一緒になって契約額が5.2億円。従って輸出入についてはその会社が担っていたと聞いております」と述べた。

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