急激な「脱炭素」が招く原油価格高騰の危機 大産油国「サウジアラビア」からの警告

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 米WTI原油先物価格はこのところ1バレル=70ドル台前半で推移している。

 10月下旬には85ドルまで上昇し、米国や日本で「ガソリン価格の高騰」が政治問題化しつつあったが、その後10ドル以上も下落している。

 新型コロナの感染再拡大による原油需要の減少懸念に加え、米国が主導した国際的な国家石油備蓄放出の動きがこれに寄与した形だ。足元の状況も、新型コロナの新たな変異株(オミクロン株)の流行が原油需要を抑えるとの警戒感が強まるとともに、米エネルギー省が戦略石油備蓄を一部放出して、ガソリン高を抑えるための措置を着実に進めている。

 需要・供給両面で原油価格の上値を抑える展開になっていることから、年末年始に原油価格が再び高騰するリスクはほとんどなくなったが、これで一安心というわけにはいかないようだ。世界の大産油国であるサウジアラビアから「近い将来、原油の供給危機が生じる」との警告が出ているからだ。

 サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相は13日、予算関連の会議で「エネルギー探査や掘削向けの投資削減が供給危機を招く可能性がある。世界にエネルギー危機が訪れるというのは予測ではなく警告だ」と発言した。2030年までに世界の原油生産量は日量3000万バレル減少する恐れがあるというが、この数字は世界の原油生産量の3割に相当し、コロナ禍以前のOPECの総生産量に匹敵する。とんでもない規模だ。

 12月6日から米ヒューストンで開催された世界石油会議でも同様の発言が相次いだ。世界石油会議は原則3年に1回開催され、世界の石油関係者が集う一大イベントだ。

 最初に口火を切ったのは世界最大の石油会社であるサウジアラムコのアミン・ナセルCEOだった。「世界は一夜にしてよりクリーンな燃料に移行できるという前提を捨てるべきだ。原油が移行期において必要不可欠な役割を果たすことを公に認めることは一部の人々にとって困難であることは理解しているが、この事実を認めないと価格は耐えられなくなるほど高くなる」とした上で「今後も化石燃料への投資を続けるべきであり、そうでなければインフレや社会不安が急増して排出目標の放棄を余儀なくされる危険性がある」と世界の指導者たちに訴えた。

 この会議に出席した米油田サービス大手ハリバートンのシェフ・ミラーCEOも「化石燃料の開発投資が長年にわたって低迷したことを受けて、世界が石油不足の時代に突入しつつある。供給不足が緩和するまで10年前後かかる可能性がある」との見方を示した。(21年12月7日付ロイター記事より)

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