内調の桐島も仲間という意表を突く展開…未だ読めない「アバランチ」の意味を考察

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制作費は足りるのか

 脚本が出色と評価されるのも不思議ではない。通常は1~3人程度の脚本家が7人もいる上、そこには藤井監督自身も加わっている。

 ほかの執筆陣も豪華。「福家警部補の挨拶」(フジテレビ)の丸茂周氏(52)や「レッドアイズ 監視捜査班」(日本テレビ)の酒井雅秋氏(46)らが書いている。

「1話完結のオムニバスドラマ以外で、1クール(3カ月)の連ドラで脚本家7人というのは聞いた試しがない。おそらく史上初」(同・脚本家)

 映像も美しい。日本映画界のトップ集団にいる藤井監督の映像なのだから当たり前だが、カット数が通常のドラマより多く、映像が頻繁に切り替わるから、臨場感に満ちている。抑えた照明も美しい。技術面は上質の映画と同等のクオリティと言える。

 それにしても制作費は足りるのか? このドラマは中身も映画並みのスケールを目指しているようだが、連ドラの制作費は1回3000万円台しかない。1億円を軽く超す一般的な映画には遠く及ばない。

 まず、このドラマには最近のドラマでは珍しい本格的なカーアクションがある。第5話では山守の後ろ盾の大道寺剛太郎・元官房長官(品川徹、85)を乗せた車に大型トラックが突っ込んだ。

 技斗(アクション)場面にも金がかかっている。羽生や明石リナ(高橋メアリージュン、34)を中心に毎回、ド派手な技斗があるが、これは時代劇の殺陣と同じで、技斗担当者がどう展開するかを考え、相手役が練習を重ねなくてはならない。技斗の場面が多いほど金がかかる。

 そもそもこのドラマは出演陣が多い。アバランチのほかのメンバーは福士蒼汰(28)で一線級。ほかのメンバーもそうだ。内閣総理大臣役で名バイプレイヤーの利重剛(59)も出ている。弟1話に経済界の大物のダメ息子役で登場した磯村勇斗(29)らゲストも登場する。ギャラが相当かさむはずだ。

 それでも金をケチる素振りが見えないのは藤井監督のプライドだろう。海外からも注目される藤井監督の名前で半端な作品は出せない。藤井監督を起用し、実際に制作にあたっているトライストーン・エンタテイメントにも同じくプライドがあるはず。

 同社は綾野や小栗旬(38)、坂口健太郎(30)、らが所属する芸能プロだが、社長の山本又一朗氏(74)は日本を代表する映画プロデューサーの1人でもあるからだ。

 山本社長は1979年、長谷川和彦監督(75)による伝説的名作「太陽を盗んだ男」を制作。2009年には「TAJOMARU」をプロデュースし、脚本まで書いた。ほかにも何本も名作に携わった。このドラマも収支より質を優先するのではないか。

 物語はまだ一波乱ありそうで、それも注目だが、惜しみなく制作費を使っている点に目を向けても面白いはずだ。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮編集部

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