ビッグボス・新庄剛志 超常現象のような珍打球に呆然…現役時代の「宇宙人伝説」

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大根斬りのようなフォームで

 数ある“新庄伝説”の中でも、最大級のインパクトを与えたのが、99年6月12日の巨人戦の敬遠球サヨナラ打だ。

 4対4の延長12回裏、4番・新庄は1死一、三塁で勝負を避けられたにもかかわらず、カウント1-0から槙原寛己の2球目が高さ、コースともに中途半端な外角球と見るや、全身をしなやかに伸ばし、大根斬りのようなフォームで左前に運んだ。

 巨人側の「左足が打席から出ていた。反則でアウトではないか?」の抗議も、「片足のすべてが出ていたわけではない」と却下。ギリギリルールの範囲内だったという点でも、“技あり”の一打だった。

 技ありに対し、“超常現象”と言えそうな珍打球を放ったのが、00年7月4日の広島戦だ。

 1回2死二塁の先制機に登場した新庄は、左翼ファウルゾーンへ高々と打ち上げてしまう。虎党の歓声がため息に変わり、ファウルと思われた直後、世にも不思議な物語が幕を開ける。

 大阪ドームの地上約60メートルの天井に当たった打球は、次の瞬間、左翼線のフェアゾーンに落下。まさかの成り行きに、レフト・金本知憲も呆然と見送るしかなかった。

 グラウンドルールにより、三塁塁審が「フェア!(インプレー)」とコールすると、天井を見上げていた新庄も慌てて一塁に走り出し、この間に二塁走者・坪井智哉が先制のホームを踏んだ。

 天井までも味方につけた新庄は「スイングも当たりも良くなかったけど、結果的にランナーを返すことができて良かった」と4番の仕事ができたことにホッとした様子だった。

体を「く」の字に折り曲げて悶絶

 メジャー挑戦を経て、04年から3年間在籍した日本ハムでも、新庄は漫画の世界を超えるようなビックリ仰天のプレーを何度となく演じている。

 移籍1年目の04年3月6日のオープン戦、ヤクルト戦では、「ファンが喜んでくれたら(アウトになっても)いいかな」と投ゴロで二塁から一挙に生還。さらに、同年7月11日のオールスター第2戦では、「パ・リーグを盛り上げたかった」と捕手・矢野輝弘が福原忍(いずれも阪神)に返球した直後の隙をついて、球宴史上初の単独ホームスチールを成功させた。

 一方、不運なアクシデントに見舞われてもショーマンシップに徹し、直後の打席で見事ヒーローになったのが、05年4月15日の楽天戦だ。

 0対0の3回1死、中嶋聡のファウルチップが、ネクストサークルの新庄の股間を直撃する。あまりの痛さに、新庄は体を「く」の字に折り曲げて悶絶したが、こんな痛々しい状況下でも、拾い上げたボールを右手で高々と掲げ、「大丈夫だぜ!」とファンへのサービスを忘れなかった。

 そして2死後、ベンチで応急処置をしてもらって打席に立った新庄は、ラスの外角高め直球をバックスクリーン左に値千金の先制ソロ。「右、○○○○打法!大当たり~!」と気勢を上げたが、さすがに走る足取りはおぼつかなく、中嶋も「ごめんなさいだったね」ときまりが悪そうだった。

 くしくも中嶋は、今季のパ・リーグ覇者・オリックスの監督。グラウンドからベンチへと居場所は変わったが、かつてのチームメイトと因縁のライバル対決を演じながら、ペナントを争うビッグボスの1年目に注目したい。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮編集部

2021年12月12日掲載

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