「長崎カジノ」は“崩壊寸前”…「出資金3500億円が集まらない」県の担当者も認めた“危機”

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「コロナの影響が大きい」

――公募の段階で、出資計画は審査項目には入っていたはずだが。

「はい、ありました。ただ、やはり大きなお金ですので、出資先企業の担当役員の判断だけではなく、上場企業もいらっしゃるようなので。取締役会だとか。(審査の段階で)財務の状況とか出資計画は提案してもらっていて、他の審査項目と合計した点数の結果で、CAIJを選定しました」

――彼らが当初提案した出資計画が、現状、頓挫しているということか。

「はい。コロナの影響がここにきてダメージが大きい。ドイツ、オーストリアは最大の危機にあるようですからね」

――おカネが集まっていない以上、長崎IRが頓挫する可能性があるということか。

「そういう話を私も耳にしておりますね。資金調達がやっぱり肝心だよね、と地元経済界のみなさんはみんなおっしゃっています」

――幹事銀行すら決まっていないというのは本当か。

「そこらへんのところは、随時報告はもらっていますね……」

 もはや匙を投げたと言わんばかりである。問題なのは、このような絶望的な状況にありながら、なぜか長崎県がこのまま突っ走ろうとしていることである。

 11月18日に佐世保商工会議所で行われた住民向けの説明会に参加したCAIJ役員は、「この地に産業革命を起こすようなキラーコンテンツを入れて、是非新しい文化を世界に発信していきたい」と声を張り上げた。説明会には、商工会議所会頭、長崎県の政策監も登壇。「かつてないスケールとクオリティ」などと“夢のIR”について語っていた。

 前出の地元経済界関係者は憤る。

「実際はお金が集まらず頓挫しかけているのを隠して、”絵に書いた餅”を喧伝しているんですから、県も商工会議所も投資詐欺に加担しているに等しい。説明会は今後も、今月15日に佐世保市、17日に長崎市と続く予定です。その上、パブリックコメントまで求めていくというんですから、呆れてモノが言えません」

「なんでカジノを潰すようなことを聞くのか」

 CAIJにも取材を申し込んだが、期日までに返答はなかった。一方、議会で質問に立った浅田議員はこう答える。

「誤解をして欲しくないのですが、私はIR推進の立場です。長崎県民のみならず九州の経済界にとって、IRは悲願です。何としてでも誘致を勝ち取るために、この苦難を乗り越えていかねばならないという思いで質問させていただきました」

 浅田議員が言う通り、地元経済界はこぞってIR誘致に賛成しており、反対派は少数だ。だが、その結果、IRに水を差すようなことを口にするのは、長崎において“タブー”になっているという。

「浅田議員はあの後、他の議員たちから『なんでカジノを潰すようなことを聞いたのか』と圧力をかけられたそうです。もっとも問題視されるべきは地元メディアでしょう。長崎新聞は紛糾した議会について一行も報じていない。誰がどう見てもおかしな審査が公然と行われ、さらに資金調達もうまくいかず計画が破綻しかけている。にもかかわらず、議会もメディアも県政に対するチェック機能を果たそうとしていないのです」(別の地元経済界関係者)

 同じくIR誘致を進める和歌山県では、県議会が事業者の透明性や安定性を問題視。住民投票を求める署名活動も始まり、県がIR説明会を延期するなど誘致に待ったをかける動きが出ている。当初、3カ所でスタートするとされてきた日本のIRだが、「今のところ難なく進みそうなのは、米大手カジノグループ『MGM』とオリックスが共同で事業者となっている大阪だけでしょう」(業界関係者)。

 カジノ誘致で心配されているのはギャンブル依存症だ。長崎県は依存症対策に万全を期していると訴えているが、長崎県庁こそが一攫千金の“ギャンブル”という夢に惑わされ、思考停止に陥っているのではないか。

デイリー新潮編集部

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