田中将大は9億円でわずか4勝…楽天の「大型補強」はコスパが悪すぎる

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若手抜擢の機会が減少

 一方、浅村と鈴木は、長期の大型契約がまだ残っているため、当面の年俸は保証されていることが予想される。また、生え抜きの則本昂大は、19年から高額年俸で7年契約という長期契約を結んだが、それ以降の3年間で21勝にとどまり、大型契約に見合う成績を残せていない。ここで挙げた選手たちは、全員がベテランと言われる年齢に差し掛かっており、来季以降、大きく成績を上げることは考えづらく、この先数年間も成績の落ちていく選手に大量のコストが発生する可能性は極めて高いだろう。

 そして、大枚をはたいて実績がある選手を集めながら、チーム成績が向上しないことの影響は、球団経営以外の部分にも表れている。特に影響が大きいのが、若手を抜擢する機会の減少だ。投手陣では、ルーキーの早川隆久、2年目の滝中瞭太が今季先発で活躍した。しかし、滝中は今年で27歳と既に中堅と言える年齢であり、高校卒の投手では松井裕樹くらいしか主力になっていない。

 若手の野手は、レギュラークラスになっている辰己涼介を除き、その他の選手は伸び悩んでいる。短期間に実績のある選手を他球団からかき集めれば、彼らでレギュラークラスが埋まることは当然であり、若い野手が入り込む余地はなくなる。たとえ、ドラフトで上位指名された選手でも、一軍出場がかなり難しいのが現状だ。こうした閉塞した状況が続けば、チーム全体の士気が低下していく危険性は極めて高い。

 冒頭で紹介した他球団から集めた選手が、主力として十分な成績を揃って残せるのは、あと1、2年程度だろう。その後、抜擢の機会を失い、スケール感がなくなった“過去の有望株”だけが残ることも十分に考えられる。来季続投が発表された石井一久GM兼監督は、かき集めた選手の力が落ちていく中で、どのように楽天を立て直していくのだろうか。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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