矢野燿大は移籍先の阪神で正捕手に…トレードで大ブレイクした“幸運な3選手”

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楽天の安打製造機

 入団から5年間、1軍で出番に恵まれなかった男が、移籍先でレギュラー獲りをはたし、首位打者を獲得……そんな“男性版シンデレラストーリー”の主役となったのが、鉄平だ。

 01年に中日にドラフト5位で入団した鉄平は、04年に1軍初昇格、50試合に出場したが、当時の中日は、福留孝介やアレックス、井上一樹ら外野陣の層が厚く、代走や守備固めでの起用がほとんどだった。翌年には、ウエスタンで打率.336の高打率をマークしたにもかかわらず、1軍では出場2試合の打席なしで終わった。

 このままでは宝の持ち腐れになると案じた落合博満監督は「今の中日では出る場所がないが、ほかのチームだったらあるんじゃないか」とトレードを打診。俊足の選手を好む楽天・野村克也監督が譲渡を申し入れ、金銭トレードが決まる。

 移籍を機に本名の土谷鉄平から登録名を改めた鉄平は翌06年、開幕戦で1番センターに抜擢されると、103試合に出場し、打率.303と結果を出した。この間、野手ではNPBワーストの9打席連続三振を記録するなど、打撃不振が続いても、野村監督は辛抱強く使いつづけた。「変わらず使ってもらえたから、3割打てました。選手って、使ってもらわなければ何もできない」と鉄平は今でも感謝している。

 そして、“楽天の安打製造機”は、09年に打率.327で首位打者を獲得した。一歩間違えば、無名のまま消えていったかもしれない男がリーグトップの打者になる。これもトレードの面白さである。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2020」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮編集部

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