新庄監督は「コソ練と根回しの天才」元チームメイト・岩本勉が証言 野村監督のID野球の後継者か

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根回しオタク

 だが、新庄監督と一緒にプレーした経験もある野球解説者の岩本勉氏に聞くと、様相が異なり、

「新庄は現役時代、派手なことをたくさんしましたが、思いつきではなく、裏で徹底して根回しをしていました。僕に言わせれば、彼は“根回しオタク”です」

 というのである。

「たとえば1999年6月12日、巨人の槙原寛己投手の敬遠球を打って阪神がサヨナラ勝ちした瞬間。新庄は日ごろ敬遠球を打つ練習を繰り返していたから、成功した。打てそうな敬遠球を打っていいか、野村克也監督にも事前に聞き、オーケーを取りつけていました。2006年6月6日、札幌ドームでの阪神戦で、地上50メートルの天井から降りてきたのも、球団や球場に根回しをし、綿密な準備をへて可能になったことです。根回しができるのは、すなわち実行力があるということ。新庄は面倒な根回しをしてまで、実行する男です」

 それにしても派手だが、

「派手なことをして結果が伴わなければ、世間の目は厳しくなる。派手なことができたのは、普段から勝ちにこだわり、批判されるリスクを背負う覚悟があったからでしょう。そもそも新庄は、日米通算で1524安打、225本塁打を打っている。勝ちにこだわって努力を重ねなければ、到達できない数字です」

直感的プレーを野村理論で答え合わせ

 だから、いきなり優勝を狙う、と岩本氏は見る。

「でも、新庄はそれを口にはしない。現役時代も、隠れてものすごい練習をしていて、僕がチームメイトだったときも、朝早くトレーニング場に入ると新庄はもっと早く来て、ウエイトトレーニングをしながら、痛めた太ももを入念にメンテナンスしていた。彼は、本当は勝ちにこだわりまくるのに、その過程を見られたくない人間。だから優勝は“目指しません”と言いながら、選手に努力や精進の大切さを伝えると思う。それに自分が(隠れて練習する)コソ練の天才だったから、見えないところで努力している選手には、すぐに気づくし、(アピールするための)見せ練ばかりしている選手も、見抜くはず」

 とはいえ、野村監督とはタイプが違わないか。

「会見で“野村監督とは野球の話をほとんどしたことがない”と言っていたけど、ありえませんって。新庄は常々、自分の勘ピューターで導き出した直感的プレーを、野村理論で答え合わせしていた。で、正解のことが多かったから、彼は野村監督が大好きで、野村監督の影響を大きく受けた。野村譲りの監督や指導が見られることでしょう」

 あの表情、あのジェスチャーでID野球をやる姿は、たしかに見てみたい。

週刊新潮 2021年11月18日号掲載

ワイド特集「栄光は誰のために」より

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