シーズン初安打の満塁弾…引退3選手の「最終打席」で起きた意外すぎる結末

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最後まで真摯にプレー

 プロ野球もシーズン終盤に入り、10月17日に日本ハム・斎藤佑樹、19日には西武・松坂大輔の引退試合が行われるなど、ファンに別れを惜しまれながら現役最後の雄姿を披露する選手たちが引きも切らない。過去にも多くの選手たちが引退試合で有終の美を飾っているが、中には最高の結果を出した選手もいれば、まさかの結果に終わった選手もいる。現役時代に輝かしい実績を残した3選手の記憶に残る“最終打席”を振り返ってみよう。

 現役最後の打席で満塁本塁打を放ったのが、大洋の主砲として活躍した田代富雄である。1986年に左手首を骨折して以来、持ち味の豪快なバッティングが影を潜めていた田代は、プロ19年目の91年も、代打で凡退を繰り返した。そして、7月20日の広島戦、久しぶりにスタメン出場した田代は、2打数無安打に終わると、同年限りでの引退を決意した。

 2軍落ち後も、田代は若手にまじって19試合に出場。打率.277、1本塁打、4打点でイースタンリーグのV争いに貢献し、最後まで真摯にプレーした。

現役最終打席のグランドスラム

 引退試合は10月10日の阪神戦。4番サードでスタメン出場した田代は、1回の第1打席で二ゴロに倒れたあと、1対0とリードの3回、2死満塁で2打席目が回ってきた。引退試合の打者に対しては、オール直球勝負で気持ち良く打たせてやるのが“暗黙の了解”だ。

 だが、打たせれば勝敗に決定的な影響が出る場面とあって、葛西稔と山田勝彦の阪神バッテリーは、カーブを投げてきた。

 これに対し、「直球はない」と読み、変化球にタイミングを合わせていた田代のバットもスムーズに反応する。直後、快音を発した打球は、全盛期を思わせるような長い滞空時間を経て、左翼席中段へ。これがシーズン初安打でもあった。

「バットの先っぽだったし、最近飛距離が落ちたから、届くかどうか心配だったけど、神様が味方してくれたのかな。ヒット1本打てればいいと思っていたのに、ホームランとは」。“100点満点”の結果に満足した田代は、フル出場の予定を変更し、この打席を最後にバットを置いた。

「王(貞治)さんの868本に比べれば、大したことないけど、278回はファンの方に夢を与えられたと思う」。現役最終打席のグランドスラムは、王もなし得なかった快挙だった。

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