オダギリジョー「オリバーな犬」 辛口コラムニストの高評価と変わらぬNHK不信

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ドラマではなく映画の作り

アナ:これまた「何を見ても何かを思い出す」ですね。出演者の多いドラマなのに登場人物の中に見知らぬ顔の方が少ないので、私も驚きました。文字どおりのオールスターキャストです。

林:それも、ドラマの世界のオールスターキャストというより映画の世界のオールスターキャスト。

アナ:本当にそうですね。今の日本映画の常連のような皆さんが集まっています。

林:ここに吉永小百合と西田敏行と中井貴一が加われば日本アカデミー賞受賞式になっちゃうけれど、そのあたりが入っていない範囲での、大作系・TV局系じゃない意識タカイタカイ系日本映画のオールスターキャストだね。

アナ:実際、オダギリさんの長篇映画監督デビュー作だった「ある船頭の話」(2019年)は、ベネチア国際映画祭やハワイ国際映画祭、ケララ国際映画祭、高崎映画祭に出品されて賞も獲得しています。敢えてジャンルでくくればアート系、あるいは単館上映系になりますかね。

林:今回の「オリバーな犬」も、作りはTVドラマというより映画なんだよね。脚本、演出、それに編集、つまりはオダギリジョーの仕事っぷり全部が、意識タカイタカイ系映画のそれ。

「オリバーな犬」の作り方

アナ:ええ、確かに。林さんのメモは「脚本篇」「演出篇」「編集篇」……と続いていますが、これも読みますか?

林:いや、キリがないからもういいけれど、簡単に言わせてもらえれば、一本道をまっすぐ進むのとは正反対で小道に分け入ることに熱心な脚本、それと呼応してストーリーを追うだけの芝居や画は許さない演出、画面の分割やボカシを多用して“ひっかかり”を仕掛けまくった編集……というのが、「オリバーな犬」の作り方。

アナ:よく林さんが「親切すぎて薄っぺら」「わかりやすすぎて平板」「消化だけよすぎて美味しくはない」などと批判する最近の日本のドラマとは対極にある作り方ですね。

林:「オリバーな犬」も、ゴールデン帯(夜7~10時)、プライム帯(7~11時)あたりのTVドラマとかブロックバスター系の映画くらいしか見ていない視聴者は見てて疲れるんじゃないのと心配にはなるけれど、ちょっと凝った映像作品を見慣れてる視聴者は気持ちよくくすぐられるだろうね。純文学の小説家が書いたミステリーみたいな贅沢さがあるわけだから。

アナ:本当にそういう印象です。……あれ、ということは林さん、なんだかんだ言っても「オリバーな犬」、お気に入りなんですね?

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