「夏の甲子園」明桜・風間球打は“ドラ1”確実 注目のドラフト候補は誰だ!

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 2年ぶりの開催となった「夏の甲子園」。学校関係者などを除き、無観客で行われ、プロ野球のスカウトにも1球団あたり同時に入場できるのは5名までという制限が設けられた。それでも、連日、甲子園球場には多くのスカウトが視察に訪れていた。度重なる雨天順延によって、全出場校が出揃う予定が当初よりかなり遅れてしまったが、ドラフト候補のプレーぶりを取り上げてみた。

ストレートはナンバーワン

 大会前から最注目と見られていた風間球打(明桜)は、2回戦で明徳義塾に敗れたが、そのポテンシャルの高さを十分に見せつけた。1回戦は4回まで投げて雨天ノーゲームとなり、さらに2日間の順延を挟むなど、調整が難しい状況もあって、本調子とは程遠い内容だった。だが、強打が売りの帯広農を相手に10奪三振、2失点(自責点1)で見事な完投勝利。続く明徳義塾戦では、150キロを超えるストレートは14球を数え、ここ一番でのボールは、他の投手が及ばない圧倒的な勢いだった。

 明徳義塾の打者は、高知大会でプロ注目の154キロ右腕、森木大智(高知)を攻略した実力派ぞろい。その強打者たちが、風間のボールの角度には驚かされたという。細かいコントロールや投球術には課題が残るとはいえ、ストレートは、今年のドラフト候補のなかで、大学生と社会人を含めて、ナンバーワンの迫力と言い切れる。1位指名でのプロ入りは、確実といってもいいだろう。

 次に風間以外の右投手を見ていくと、深沢鳳介(専大松戸)が安定感で頭一つ他の投手をリードしている。サイドスローに近いスリークォーターから両サイドに投げ分ける制球力は抜群。緩いカーブを有効に使ってストレートを速く見せ、シュートやスライダー、チェンジアップといった多彩な変化球で勝負ができる。選抜準優勝の明豊を完封する見事な投球を披露した。

 阪上翔也(神戸国際大付)は、肘の故障で選抜は不本意な投球だったが、この夏、完全復活を果たした。角度のある最速148キロのストレートと、小さく変化するツーシームやスライダーを武器に、2試合連続で好投を見せている。また、京本眞(明豊)は、190cm近い長身を上手く使えるようになったことで、選抜の時に比べて一気に球速がアップした。コントロールはいまいちだが、スケールの大きさは抜群であり、プロが好みそうなタイプの投手だ。

 このほか、滝口琉偉(日大山形)、高須大雅(静岡)、寺嶋大希(愛工大名電)、岩佐直哉(近江)、花田侑樹(広島新庄)、山崎琢磨(石見智翠館)なども、ドラフト候補として注目されている。

野手は強打者タイプが多い

 続いて、左投手をみていこう。木村大成(北海)は、選抜に続いて神戸国際大付に競り負けたが、春よりもストレートの勢いが明らかに増しており、力で打者を抑え込む場面があった。スタミナも申し分なく、先発タイプとして貴重な存在だ。

 秋山正雲(二松学舎大付)は、170cmという上背が気にならない実力派。球速は140キロ台前半にもかかわらず、数字以上の威力があり、変化球の質が高い。同校の先輩で、同じサウスポーの大江竜聖(巨人)と比べても、高校3年時点の総合力は上回っている。

 松浦慶斗(大阪桐蔭)は、選抜で打ち込まれて、その後もなかなか公式戦の登板はなかったが、最後の夏に復調してきた。1回戦の東海大菅生戦は、激しい雨のなかの投球だった。悪条件のなかでも、ボールの勢い、制球力ともに申し分なく、集中力を切らさない精神的な強さが光っていた。

 一方の野手は、上位指名が確実視される選手は不在だったが、将来性が豊かな強打者タイプが多い。金子京介(盛岡大付)は、野手陣のなかで、最も強いインパクトを残している。岩手大会で5試合連続ホームランを放ったスラッガーは、甲子園でも1回戦で3安打をマーク。パワーだけでなく、技術も高く、長打力と確実性を兼ね備えた右の強打者だ。ただ、プロから需要が少ない一塁しか守れない選手であるため、大学進学希望という声も聞こえてくるが、早くからプロで鍛えてもらいたいバッターだ。

 その他の野手では、田村俊介(愛工大名電)をはじめ、花田旭(大阪桐蔭)や前川右京(智弁学園)、立石正広(高川学園)がスタンドへ叩き込むパワーを見せつけたほか、松本龍哉(盛岡大付)と池田陵真(大阪桐蔭)も高校生離れした打球の速さが目立っていた。

 最後は捕手だ。総合力では、中川勇斗(京都国際)が頭一つ抜けている印象だ。170cm、70kgと捕手としては小柄だが、安定したキャッチング、速さと正確さを備えたスローイング、パンチ力のあるバッティングと、全てにプレーが高いレベルにある。体格的なスケールの無さを補って余りあるだけのプレーを見せており、本人がプロを志望するならば、手を挙げる球団が出てくる可能性は高い。このほか、高木翔斗(県岐阜商)、東出直也(小松大谷)、加藤愛己(明徳義塾)、加藤晴空(東明館)などもスカウト陣の注目を集めていた。

 地方大会で、前出の森木、小園健太(市和歌山)、達孝太(天理)といった上位候補が姿を消したことで、「1位間違いなし」と断言できる選手は、風間だけという印象だったが、それでも見どころは決して少なくなかった。10月11日に開かれるドラフト会議では、注目選手の動向にぜひ注目してもらいたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年8月27日掲載

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