コロナに苦しむ中小企業が手を出す「2者間ファクタリング」 法外な金利で事件化も

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年率換算では240%

 この難点を補う手法として台頭しているのが「2者間ファクタリング」である。A社とB社の例を続ける。

 コロナ禍が長期化し、A社の資金繰りはさらに逼迫。再びファクタリング会社にB社の100万円分の売掛金を売却することで資金調達しようと考えた。だが、これ以上B社に知られて自社の信用を傷つけたくない。そこで「御社の信用を傷つけない」と宣伝する2者間ファクタリング業者に相談することにした。

 2者間ファクタリング会社は、即日100万円分の売掛金を買い取ってくれることになった。だが、手数料は20%(20万円)と高く、A社に入ってくるのは80万円のみ。さらにファクタリング会社はB社には債権購入の通知をしない。みずから回収には動かず、A社に債権回収を委託する。A社はB社から100万円が支払われたら、その100万円をそのまま2者間ファクタリング業者に渡し、取引が完了する。

 2者間ファクタリングは表向き「債権の売買」だが、売掛金を担保にした「売掛金担保融資」と形はほとんど同じで、実態は20%という高利で金貸しをしているのと同じだ。1ヵ月間の手数料を20%とすると、年率換算では240%という法外な高利になる。

「荒稼ぎを始めている」

 2000年代に多重債務者が増えたことを受け、ヤミ金業者撲滅を目指して政府は貸金業法の改正に踏み切り、上限金利は年率15~20%に抑えられた。年率15%では貸金業者の利益は出ず、法改正後、貸金業者の大半が廃業した。

 だが、近年新たな動きが起きている。「債権の売買という形を取れば、堂々と高利貸しができる」と考える勢力の台頭だ。これが2者間ファクタリング会社で、契約書にはしっかりと「債権の売買」と記されているため、「高利貸しをしている」という指摘されても「いえ、貸金ではなく『債権の売買』をしているだけです」と突っぱねることができる。

 昨年12月の東京都議会では2者間ファクタリングの実態について質問があがり、都は利用実態や手数料の調査に乗り出している。

 今年2月には、警視庁が中小企業に法外な金利で金を貸し付けたとして一般社団法人「ハートフルライフ協会」(東京都・中央区)の幹部らを貸金業法違反(無登録営業)と出資法違反(超高金利)の容疑で逮捕した。同協会はファクタリング会社を装っていたが、警視庁は実質的に「ヤミ金」と判断した。

 2者間ファクタリング業者のすべてがヤミ金業者とは限らないが、貸金業界には「かつてヤミ金で儲けた連中が、コロナ禍を利用し、ファクタリングで荒稼ぎを始めている」という見方が根強い。

 コロナさえ収束すれば、という希望的観測はあるものの、悪貨が良貨を駆逐してしまいかねない状況下、行政は何らかの対応策をとるべき時ではないか。

デイリー新潮取材班

2021年8月11日掲載

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