中川大志×新木優子 日曜夜を気楽に過ごす「ボクの殺意が恋をした」

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「これはあの名作オマージュですね」

 私は映画にあまり詳しくないが、「これはあの名作オマージュですね」と思わせるシーンもちょいちょいある。丈一郎が遺した隠し部屋(武器や秘密道具が収納されている)は、「キングスマン」を彷彿とさせる。もちろん質も精度も段違いではあるけれど、ちょっと心躍る瞬間。

 また、デスプリの企みを看破して阻止する柊だが、その背景には丈一郎に鍛えられた何気ない動きがベースになっていたり、謎の座学が役に立っている。アラフィフおばちゃんとしては、「ベスト・キッド」を思い出してしまうわけよ。いじめられっこ少年のダニエル(ラルフ・マッチオ)が日系人の謎のおじさん・ミヤギ(ノリユキ・パット・モリタ)から空手を教わることになるも、雑巾がけやらペンキ塗りやらの雑用ばかり。でもその単調に見える動きこそが空手に役立つ訓練だった、というヤツね。

 柊はただの清掃業者なのに、実は丈一郎が仕込んだ特殊な訓練の繰り返しで、自然と体は鍛えられている。いきなり矢や毒針が飛んできても察知して手で止めたり避けたりすることができるし、殺気も感じ取れる。都合よくいかなアカンところは都合よく進み、間が悪いところは全力で間の悪い展開。もう難しいことは抜き、感覚だけで楽しめ、考えるな、感じろ、というドラマなのだ。

 忘れちゃいけない、ヒロインの新木優子もメキメキと音を立てて出世している女優のひとりだ。2016年あたりからは新木の姿を見ない日はないくらい、馬車馬のような働きを見せている。「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」(フジ系)や「コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命」シーズン3(フジ系)などの地上波有名人気作品にも出演しているが、個人的には深夜枠ドラマの新木が好き。勝手に「新木優子オススメ三部作」を記しておく。

新木優子オススメ三部作について

「いつかティファニーで朝食を」(日テレ系)では、裕福ではない家庭に育ち、父親との確執を抱える、真面目なヨガインストラクターの役。線の細さが動物性食品を摂らない繊細な設定にぴったりだった。こじゃれた職業の女性たちが遭遇する恋の憂き目と落とし穴を描く作品で、地味だけど密かに中毒性のあるドラマ。主演はトリンドル玲奈、森カンナと徳永えりが共演。

「ラブラブエイリアン」(フジ系)は初主演作で、ちっさい宇宙人を居候させてあげるフードコーディネーターの役。これ、ラブコメディだが女たちの辛辣な本音と欲がぶちまけられていて、かなりの秀作なのでオススメ。新木も可愛いが、地球人をディスる宇宙人2匹も超絶キュート。

 最後の「100万円の女たち」(テレ東)では、子役出身で世界的に有名になった女優の役だったが、主役の野田洋次郎にふんわり秋波を送る姿はうっかり恋するくらい可愛かった。野田をこき下ろす鼻持ちならない作家(中村倫也)を面と向かって罵る、案外毒舌家という設定も気持ちがよかった(のちに非業の死を遂げるんだけど)。今回の美月役も毒舌家の設定で命を狙われるというところで、ちょっと懐かしく思い出した次第。

 ドラマ自体は特筆すべき内容でもないので、いろいろと盛り込んで書いてみた。いや、楽しんでますってば、日曜夜を。田中みな実が数ミリ浮いている感じも含めて、楽しんでますってば!

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

デイリー新潮取材班編集

2021年8月1日掲載

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