デジタル庁重要ポストに“疑惑の慶大教授”を推した和泉首相補佐官と杉田官房副長官の非常識
平井卓也・デジタル改革担当大臣が、東京オリンピック・パラリンピック用のアプリ、通称「オリパラアプリ」を巡り、システム発注先のNECに対して“暴言”を吐いたとされる問題が、今も尾を引いている。水面下で激しいバトルが続く背景には、9月に発足するデジタル庁の「巨大利権」の奪い合いがある。
“暴言”の背景とは
この問題を最初に報じたのは、6月11日付の朝日新聞。〈事業費削減「脅した方が」 五輪アプリ請負先巡り平井大臣指示〉と社会面で大きく見出しを打ち、平井大臣の暴言があったと、入手した音声データまで公開した。それに追い打ちをかけたのが6月17日発売の週刊文春で、朝日新聞が公開した音声データの別発言を紹介し、平井大臣が自身と近いベンチャー企業を選定するよう発言したと報じた。
「翌週の週刊文春でも、平井大臣は五輪アプリを受注しているNTTグループの幹部から2回にわたって接待を受けていたことも明らかにされました。これに対して平井氏は、自分の発言が捻じ曲げられていると、自らこのときの音声データを公開。さらにオリパラアプリの発注プロセスに問題がなかったかどうか、外部弁護士など第三者を交えて調査を始めたと会見で語っていた。自身に対する疑惑を『徹底的に透明化する』と言っていましたが、焦点は、そもそもなぜNECに暴言を吐いたのか、その背景です」(大手紙デスク)
平井大臣の“暴言”音声が流出する前に前哨戦があったというのは、この問題を追いかけているジャーナリストだ。
「オリパラアプリは73億円もの巨額の事業にもかかわらず、担当大臣がまったく知らないところで業者選定が行われていました。今年に入って国会で野党から追及され、関係する与党の大臣たちは誰もまともに答弁できなかった。いったい誰が決めたのだ、という話になったのですが、和泉洋人・首相補佐官と内閣官房のIT総合戦略室(IT室)の幹部で決めていたことがわかりました。しかも海外からの観客受け入れがなくなり、アプリの必要性自体が失われたため、平井大臣が73億円を大幅に減額しろと迫った。それが例の“暴言”につながったというわけです」
嫌みを言っているようにも
オリパラアプリはNTTコミュニケーションズが主体となる企業連合が受注したが、その中の1社で、しかも受注金額も小さいNECを、なぜ平井大臣は槍玉に挙げたのか。IT室の関係者が明かす。
「週刊新潮も報じましたが、IT室のナンバー2でオリパラアプリを担当していた室長代理の神成(しんじょう)淳司さんがNECと近く、彼が担当するプロジェクトはしばしばNECが受注しているので、誰もが訝しく思っていたのです。『一発遠藤のおっちゃん(NEC会長)辺りを脅しておいた方がいい』という平井大臣の発言は、同席していた神成さんに向けて嫌みを言っているようにも聞こえました」
神成氏は慶應義塾大学の教授で、IT室発足以来の民間メンバーとして業者選定などに絶大なる力を誇ってきた。前出のジャーナリストも、
「IT利権を一手に握ってきた和泉さんと神成さんたちからすると、発注の透明化を言い出した平井大臣が鬱陶しくなったのではないでしょうか。9月に発足するデジタル庁が発注を一手に握るのに、大臣に口を出されるのはかなわない。そこで文春に音声を流したのではないか、という見方も出ています」
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