愛される共通点は「スネに傷」? ウッチャンにEXIT兼近…人気者たちのバランス感覚

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「世界の果てまでイッテQ!」はすごい。世帯視聴率もさることながら、コアターゲットとされる20歳から49歳までの男女にも大人気だ。日曜夜のゴールデン帯の放送ということもあるだろうが、14年の長きにわたってお茶の間に愛されている。

 私もいち視聴者として見ているが、出演者が誰もエラそうにしないというのが魅力の一つではないだろうか。81歳のデヴィ夫人でさえ、若者と一緒にロケ先で格闘している。イモトアヤコさんやいとうあさこさん、ガンバレルーヤなど、女性のお笑い芸人も多い。でも爪痕を残そうとするガムシャラさより、人の良さそうな雰囲気が先に立つ人ばかりだ。

 中でも異色なのはMCのウッチャンこと内村光良さんだろう。芸歴は長いのに、共演者たちともフラットだ。それは吉本系芸人たちの冠番組とは真逆である。わかりやすいところでは松本人志さんの番組ではこうはならない。「ワイドナショー」しかり、「水曜日のダウンタウン」しかり、松ちゃんを頂点としたピラミッド構造で進むのが画面の外にも伝わってくる。明石家さんまさんの番組も同じだ。共演者たちは、松ちゃんやさんまさんが笑うかどうかを気にしながらトークする。その権力構造がお茶の間にも広まっているからこそ、松ちゃんやさんまさんの発言はネットニュースになりやすい。御意見番という立ち位置になってしまうということだろう。

 けれどもウッチャンの発言が、ネットニュースになることはあまり見ない。どちらがいい悪いということではなく、所属事務所のカラーや環境によるところも大きい。でもあえて一つ言うならば、ウッチャンにはわかりやすい負い目があるからではないだろうか。

 それは言わずと知れた、妻・徳永有美アナウンサーとのかつての不倫である。その影響により徳永アナはレギュラー番組を降板し、後にテレビ朝日を退社してウッチャンと結婚した年に始まったのが、まだ深夜帯番組だった頃の「イッテQ!」だ。今は家庭も円満だし、過ぎたことである。ただ、過去は過去と開き直ったり、プライベートと芸は別と割り切ることもウッチャン自身がしていないように見える。だから御意見番のように振る舞うことにためらいがあるのではないかとさえ思うのだ。

 思えば「イッテQ!」のレギュラー陣は、意外と問題児だらけである。出川さんは先日のマリエさんの「枕営業」暴露が飛び火したし、その出川ガールズのデヴィ夫人もかつて傷害罪に問われたことがある。かつての人気メンバー・手越祐也さんも、度重なる未成年との飲酒やコロナ禍での会食でジャニーズを退所。ウッチャンをはじめ「スネに傷」のある面々が、負い目と恥じらいを持っている。それを口に出さずとも互いに理解しているから、信頼関係はあっても上下関係は見えてこない。ありていに言えば、失敗した人の痛みがわかる人たちの連帯。そういう関係性があの番組を形作っているように思うのである。

指原、みちょぱ、EXIT兼近…新・御意見番たちに見る負い目があるからこそのバランス感覚

 そもそもウッチャンの人柄の良さや面倒見の良さ、芸へのストイックさは業界内外から定評がある。負い目だなんだではなく、元からいい人であり、だからこそ番組の人気があるのだと見ることもできるだろう。

 とはいえ最近の人気者、特に新・ご意見番たちの出自を見ると、みな何かしら「スネに傷」がある人ばかりと言えないだろうか。例えば、指原莉乃さんにみちょぱさん、EXITの兼近さん。みな発言が次の日にニュースになる。指原さんはアイドル時代に赤裸々な恋愛スキャンダルが発覚し、みちょぱさんは10代の時、自宅に踏み込まれ元彼が逮捕されたことを明かしている。兼近さんも売春斡旋容疑での逮捕歴がある人だ。それでも皆、人気は衰えない。力むことなく発言する姿は、とても冷静に自分の見え方を理解しており、むしろ尊敬を集めているように見える。

 いい子すぎず、悪い子でもない、絶妙なバランス。何かとすぐ炎上する世の中で、世間を騒がせるニュースや同業者へのコメントを求められても安易に乗らない。それはサービス精神がないのではなく、自分が偉そうに言える立場じゃないし、という負い目と冷静さがあるからではないだろうか。

 人気芸人やイケメン俳優が不倫や事件を起こし、なかなか芸能界復帰もできない昨今。容姿にも収入にも伴侶にも恵まれて、何不自由ないと思われている人ほど、批判される度合いも大きい。その点、「スネに傷」持つタレントたちは、自分にも視聴者にも必要以上に期待をしない。これからの人気者はどれだけ持っているかではなく、どれだけ捨てられるかがカギなのだろう。クリーンな生活を送るのはもちろんだが、人気者としての見栄やプライドや打算を捨てられるのか。ウッチャンや兼近さんたちを見るたび、そのすごみを思い知る。

冨士海ネコ

2021年7月15日掲載

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