専門家がワクチンへの疑問を徹底解説 妊娠中も接種すべき? 持病の有無で副反応は変化?

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 ワクチンがゲームチェンジャーになり、秋以降にコロナの出口を迎える――という期待は膨らむが、一方で、各自治体への配分がうまくいっていないのか、予約停止になる地域も出ている。そのうえ、いくら安全だといわれても、未知の異物を体内に入れるのだから、接種自体への不安も、尽きないことだろう。

 そこで、ワクチンへのあらゆる不安に回答を示したい。

 Q.2回目、3週間以上空くとマズい?

 東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授は、

「米CDC(疾病予防管理センター)は2回目の接種を、1回目から6週目までに終えることを目安にしています。英国はどのワクチンも、1回目から12週目まで容認していますが、その英国では感染者数の再増加が見られます。しかし、6週目までなら大丈夫だと考えられます」

 と説く。厚労省予防接種室に補足してもらう。

「ファイザー製ワクチンは早くて19日後、モデルナ製は、早くて21日後に2回目の接種を受けられます。また、ファイザーは3週間後、モデルナは4週間後という標準の接種間隔を超えても、2回目の接種は受けることができます。3週間以上空いても、接種を1回目からやり直す必要はありません。しかし、なるべく早く2回目を受けていただけたらと思います」

 Q.死亡者356人中「80代以上」6割超でも「超高齢者」も接種すべきか?

 厚労省によれば、ワクチン接種後に死亡したと報告されている350人超のうち、80歳以上が231人を占め、90歳以上が102人におよぶ。こうしたデータを見て、接種にリスクを感じる人もいるだろうが、

「ワクチンは寿命を延ばすものではないので、接種後に亡くなる人はいます。しかし、ワクチンと死の間に因果関係は見られないので、超高齢者でも打ったほうがいいです」

 と、浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫医師は断言する。一方、寺嶋教授は、

「超高齢者でも体力や気力があり、活動性を保っている方は、外出や会食、人と会う機会も多いと思うので、接種が望ましい。一方、体力に不安がある方は、ほぼ自宅で過ごしたり、介護が必要だったり、施設に入っていたり、という状況が想像されます。そうした方は接種を控えるという選択肢もあると思います。その場合は、家族や介護者など周囲の人ができるだけ接種して、高齢者を守ることが重要になります」

 Q.「持病の有無」で効果や副反応に違いはあるか?

「臨床試験の被験者は、持病がない人がまず対象になるので、いまのところデータに乏しく、結論が出ていません。ただ、イスラエルなど何百万人もの人が接種した国での、持病がある人に対する効果や副反応のデータを見ると、発症予防効果が著しく劣ったり、副反応が強く出たりすることはないようです」

 寺嶋教授はそう言い、

「ぜんそく、アレルギーなども、基本的には接種の妨げにならないようです。強いていえば、接種後は15分といわず、30分くらいは様子を見ましょう、ということくらいでしょうか」

 と加える。矢野医師がさらに追加する。

「免疫に影響するような持病の場合、効果が変わることがあり、たとえば抗がん剤を使って免疫が低下している場合、効果が落ちる可能性があります。ただ、いずれにせよ、打ったほうがいいと思います」

母乳を通して抗体が

 Q.子どもは何歳以上なら打つべきか?

「ファイザー製は12歳、モデルナ製は18歳以上なら問題ない、という実験結果が出ています。二つのワクチンはほとんど同じなので、データが出ていないだけで、モデルナ製ももっと年少で打ってもいいのだと思いますが、現時点では、このように示されています。両社とも臨床試験を経て、打ってよい年齢は徐々に下がっていくでしょう」

 そう話すのは、埼玉医科大学の松井政則准教授。寺嶋教授が補う。

「20歳未満は、国内では死者もなく重症化率も低いので、あとは周囲の感染状況や、高齢者と同居しているかどうかなど、個々の状況から判断していく必要があると思います」

 Q.「不妊リスク」はデマでも妊娠中は避けたほうが無難か?

 寺嶋教授が説明する。

「不妊のリスクが高まるという報告は、いまのところありません。一方、妊娠中の感染は重症化リスクの一つとされています。感染すれば、入院できる施設、感染したまま分娩できる施設は限られるので、感染しないことを重視し、ワクチンを接種するほうが望ましいかもしれません。また、米国の報告では、妊娠している人としていない人で、発熱や頭痛、倦怠感などの副反応の出やすさに、違いはなかったようです」

 松井准教授が加えて言う。

「妊娠中、授乳中、妊娠を希望する人が打っても問題なく、授乳中だと、むしろ母乳を通しておかあさんの抗体が赤ちゃんに入る、というデータもあります」

 Q.働いている人が打つべきタイミングは?

「一番反応が出やすい翌日くらいは、休めるようにしておいたほうがいいと思います。次の日に重要な会議やプレゼンテーション、アポイントメントなどがある日は、避けたほうがいいでしょう。職域接種も、同じ部署の人が重ならないように、うまく振り分けたほうがいいと思います」

 とは寺嶋教授の説明。矢野医師が加えるには、

「2回目の接種では、倦怠感や発熱の症状が出る方が多い。ですから特に2回目の翌日は、できれば休めるようにし、それが無理でも、激しい仕事は避けたほうがいいでしょう」

 Q.仕事前日の接種でも経口補水液でしのげる?

「あまり関係ないと思いますが、副反応で熱が出ると脱水になることがあるので、一般論として、水分はとったほうがよいでしょう」

 と、松井准教授。寺嶋教授が補って言う。

「接種前も接種後も、必要以上に飲む必要はありません。また、副反応のひとつに迷走神経反射があり、接種後に気分が悪くなったり、ふらついたりする場合があります。接種時に脱水傾向にあると、この反応が起きる可能性が高まるかもしれませんが、脱水の状態で接種するのはよくない、という程度の話です」

 翌日、きつい状況であってもしのげる、というほどではないようだ。

 Q.インフルエンザワクチンで不調の人の留意点は?

「コロナワクチンは、インフルエンザワクチンとは別物なので、打ってはいけないことはありません。ただ注意は必要なので、打つ前に医師に伝えておくといいでしょう。接種を避けるべきなのは、コロナワクチン自体にアレルギーがある人、つまり1回目の接種でアレルギー反応が出た人です」

 と、寺嶋教授。矢野医師もこう強調する。

「打つべきでない人は2種類しかいません。接種当日時に37・5度以上の熱がある人と、1回目の接種でアナフィラキシーが起きた人。それ以外の人は、なるべく打ったほうがいいです」

痛みは少ない

 Q.「筋肉注射」痛い人と痛くない人の差は?

「世界的には筋肉注射が主流で、そのほうが効きやすく、副反応も少ないのですが、日本では、かつて筋肉注射によって大腿四頭筋拘縮症が発生し、それがトラウマになって皮下注射が主流です」

 という矢野医師の訴えに続き、寺嶋教授が説く。

「筋肉注射は皮下注射より深いところまで刺しますが、だから痛いということはありません。注射の痛みは基本的には、針の太さと注入量で決まりますが、今回のワクチンは細い針が使われ、ファイザーで0・3cc、モデルナで0・5ccという量ですから、痛みはインフルエンザワクチンなどの皮下注射より、むしろ少ないと思います。先日、集団接種を手伝い、数百人に打ちましたが、特に痛がる様子はありませんでした」

 松井准教授が加える。

「筋肉のほうが皮下脂肪よりも免疫細胞が多く、より高い効果が期待できます」

 Q.すでにコロナに感染した人は打たなくていい?

 松井准教授は、

「打つべきです。かかったことがある人の再感染も指摘される一方、実験によると、一度感染した人が打つと、より高いプライミング効果が期待できます。以前に感染した人の血清のウイルス中和反応を見ると、デルタ株はあまり中和しないことがわかっています。一方、感染した人がファイザー製ワクチンを1回打って、どんな変異種にも中和抗体ができるようになったという結果が出ています」

 と訴える。寺嶋教授は、

「感染して得られる抗体の量は、ワクチンを打って得られる量より少なく、また、感染して得た抗体は、だんだん下がるのではないかと言われています」

 と言って、こう加える。

「私も最初は、自然にできた抗体のほうがいいと思っていました。しかし、今回のワクチンはよくできていて、一度感染した人は、1回の接種だけでも抗体量が大きく上がるようです。免疫をより強固にし、長持ちさせられるという意味で、打ったほうがいいです」

 Q.若者に「高熱」多発の対処法は?

 松井准教授が説く。

「副反応は免疫反応が起きると出るもので、若い人は免疫反応が強い分、副反応も強い。花粉症も歳をとると症状が弱くなるといいますが、同じような原理です。ちょっと頭が痛い、熱がある、という程度なら、市販の解熱剤や鎮痛剤を飲めばいいですが、高熱が何日も続くようなら、かかりつけ医に相談したほうがいいでしょう。そこまでの方は多くないと思いますが」

 また、多少残念な話だが、

「副反応が多く出た人のほうが抗体もたくさんできる、というわけではないようです」(寺嶋教授)

 Q.ワクチン接種後に生活上で注意することは?

「確率は低いものの、ブレイクスルー感染、すなわちワクチンを打っていても感染することはあります。ですから、抗体ができたからといってマスクを外すのではなく、集団免疫を獲得できるまでは、いままでのような対策は続けたほうがいいでしょう」(矢野医師)

 いまの感染状況の前にも、そしてワクチンを前にしても、大切なのは冷静になって、正しく心配すること。それこそがコロナの出口への近道のはずである。

週刊新潮 2021年7月15日号掲載

特集「無視される真実 五輪『無観客』圧力でも『重症者・死亡者』激減 『子どもの死者』ゼロ」より

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