小出恵介 4年ぶりドラマ出演で再出発 “5億円違約金問題”はどうなったのか

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 2017年、当時17歳の女子高生と飲酒し性行為におよんだとされ、翌18年に大手芸能プロダクション「アミューズ」を退所した小出恵介(37)が、インターネットテレビ・ABEMAで7月15日から始まる連続ドラマ「酒癖50(フィフティ)」に主演する。ドラマ出演は4年ぶり。再出発する小出には同社に立て替えてもらった違約金約5億円の返済が待ち受けている。

 不祥事の発覚当初は一部で「引退」「追放」などと報じられた小出だが、芸能界内にそれを信じる者はいなかった。当初から「いずれ復帰する」と見られていた。その大きな理由は違約金を返済しなくてはならないからだ。サラリーマンなどに転身したら、まず返せない。

 小出が刑事責任を問われなかったことも背景にはある。この不祥事は『FRIDAY』の報道によって発覚し、小出は大阪府青少年健全育成条例違反の疑いで書類送検されたが、不起訴になった。

 女子高生とも示談が成立し、民事責任の問題も一応は決着していた。残されたハードルは世間の処罰感情。それを乗り越えるのに4年を要したことになる。

 インターネットテレビからの復帰という形は無難だろう。商品イメージを気にするスポンサーが二の足を踏むので、最初から地上波は難しい。収録現場にも取材陣が詰めかけるだろうから、事実上は無理だった。

 アミューズに立て替えてもらった違約金は約5億円。昨年10月にひき逃げで逮捕(不起訴)された伊藤健太郎(24)が最初に請求された約7億9000万円にはおよばないものの、途方もない金額であることに変わりはない。

「違約金は請求されても実際には支払わなくてもいい」とか、「所属芸能プロが立て替えた分は返済しなくても問題ない」などと考えている人もいるが、それは誤解。スポンサーが違約金をうやむやにしたら、株主や税務署から問題視される。税務署からは「違約金を取れない理由があるのか」などと問われる。

 所属芸能プロが違約金を肩代わりする場合も同じ。立て替え金を放棄することは出来ない。アミューズは東証1部上場企業ということもあり、株主の利益を損なうような行為は決して許されない。

 同社は立て替えた約5億円を損金(損失となった金銭)として会計処理した。まるで同社が損を被ってくれたように聞こえるが、あくまで会計処理上のこと。その損金を小出が同社に返済する。

 小出は2018年、同社との契約が終了したが、同社には債務が残ったまま。万一、その返済を放棄したら、芸能界で仕事ができなくなってしまう。信用がなくなるからだ。これはどの業種でも同じ。せめてもの救いは返済先が古巣で、街金のような厳しい取り立てを受ける恐れはないことだろう。

 当時、小出も自己資金から違約金を払った。だが、その額は約3000万円。とても足りなかった。ちなみに違約金は全額をタレント本人が支払う。タレントと所属芸能プロが負担を分け合うようなことはない。不祥事を起こしたのはタレントなのだから当然だ。

 小出の再出発は返済の本格的な始まりも意味するが、不祥事前ならいざ知らず、今となると道のりは険しい。地上波の60分ドラマなら、主演するとギャラは1本100万円から300万円が相場だが、ABEMAのギャラはその6~7割前後と見られる。小出としては「酒癖50」で俳優としての“市民権”を完全に回復し、1日でも早く地上波に復帰したいところだろう。

 さらに稼ぎになるのはCMだが、その復帰は茨の道だ。スポンサーは商品イメージを上げるためにCMを流すのだから、逆にイメージを下げかねないタレントの起用は極端なまでに嫌がる。一度不祥事を起こしたタレントを使うことはまずない。それどころか、不祥事を起こしそうなタレントの情報も集めており、リスクを避けている。

 では、どうして小出の違約金が巨額になったのかというと、まず乳飲料メーカーのCMが1本あった。この乳飲料メーカーがCMを流すために買ってあった放送枠の代金を弁済しなくてはならなかった。こういう時、代わりに流れるのはACジャパンのCMである。もちろんCMやポスターの制作費も請求される。

 収録が済んでいたNHKの主演ドラマ「神様からひと言」は放送中止になった。特殊法人である同局も違約金を請求する。受信料を無駄遣いしたら、責任を追及されてしまうからである。

 このドラマは毎回30分で計6話。総制作費は1本1500万円前後だったので、計9000万円前後の違約金が請求されたと見られる。

 ほかにも主演級の明石家さんま(66)役で収録を済ませていたネットフリックスの「Jimmy~アホみたいなホンマの話」を撮り直しにしてしまった。さらに収録前の連ドラ1本、撮影済みの映画1本に大きな影響を与えた。これでは約5億円の違約金も不思議ではない。

「酒癖50」で小出が演じるのは、酒癖の悪い人間に更正プログラムを提供する会社に勤務する男だ。プレスリリースにはこうある。「お酒によってあぶり出される人間の本当の弱さや愚かさ、現代社会の闇を描く」。小出の不祥事も酒が絡んでいた。それを考えると、なんとも意味深である。

 小出は同じリリースでこう語っている。

「人生、生きていて、綺麗ごとだけじゃない。自分の体を通して学んだし、経験したからこそ、本作を通して表現に昇華できる機会をもらえたのは大変有難かったです」

 こうも口にしている。

「自分には到底荷が重いのではないかと逡巡しておりましたが、逃げずに挑戦せねばと思い、気持ちを奮い立たせました。4年という時間がハードルに感じたこともありましたが、今回は挑戦という気持ちですべてをさらけ出す気概で挑みました」

 険しい道のりが続きそうだが、一方で人間としての厚みが増したようだ。もともと演技面での評価は高いから、イメージの回復を成し遂げられれば、不祥事前並みの活躍も非現実的ではないだろう。

 昨年から所属している芸能プロはリズメディア。小規模だが、日本を代表するシンガー・MISIA(42)がいる。これは心強い。最近は独立ブームだが、力のある芸能プロは外圧から守ってくれる。仕事が入りやすい。小出のような再出発組には格好に違いない。

 小出の再出発の成否のカギは現所属芸能プロが握っている。

ライター・山本継男

デイリー新潮取材班編集

2021年7月10日掲載

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