小池百合子都知事、入院の狙いは? 二階幹事長との蜜月関係、国政復帰プランも

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 過度の疲労で入院していた小池百合子都知事が、30日朝に退院した。都民は同情し、「五輪無観客」の公約がウケて、陣営への支持は高まりつつある。が、彼女の過去の所業を振り返れば、気になってしまうのだ。敵前逃亡か高等戦術ではないか、と。

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「休養を発表する1週間くらい前に知事に会いましたけど、“2日間寝てない”って言っていました。政府やIOCと対峙して命を削りながらやっていますよ」

 選挙戦の最中、本誌(「週刊新潮」)記者からの問いかけにそう語るのは都民ファーストの会代表の荒木千陽氏である。

 6月22日、新型コロナ対策と五輪準備の「船頭」たる小池百合子都知事(68)が突如倒れた。同日の都庁の会議で声が嗄(か)れ、息切れをしている様子だったというが、その日に都内の病院を受診、過労で入院となったのだ。

 都政関係者が言う。

「確かに入院前から小池さんには“異変”が見受けられました。何を問いかけても返事があいまいで、人の話を聞いているかわからない。時折ため息をつくこともありました。ここのところほとんど休めていない状況だったようです」

 さらに、“パートナー”との別れが疲労に拍車をかけたと言われている。

「6月初め、愛犬の“そうちゃん”が亡くなったのです。ヨークシャーテリアのメスで20年近く飼ってきました。家では小池さんが“そうちゃーん”と追いかけまわす家族以上の存在です」(同)

 都心部にある総合病院の個室に入院中の小池知事の様子について、この関係者は、

「PCR検査は陰性でしたが、熱があり、点滴も打っている状態です。未だ精神的に打ちひしがれている様子でした」

 と明かすが、過労による入院にしてはかくも長き不在には違いない。

「ここまでくると、入院の本当の理由を知りたいです」

 と都民ファの候補者も困惑を隠さない。

「小池さんは党の特別顧問です。党本部からは街宣車で走りながら流せる小池さんの『音源』が届きました。でも、それは事前運動用で、小池さんがひたすら都民ファの政策を訴えているだけ。『○○候補に一票を』と言っている選挙運動用の音源ではないんです。いつその音源が届くかと思っていたら、結局届かずじまい。もちろん、小池さんが応援にくる予定もありません」

 彼らからすれば今回の選挙は人生を賭した一世一代の大勝負。疑念の声が噴出するのは当然のことだろう。

 都政担当記者は、

「確かに小池さんはもともと選挙に積極的ではないと言われてきました」

 として、こう続ける。

「小池さんは毎週土曜か日曜のどちらかに通称“勉強会”と称するコロナ対策に関する会議を都の幹部と行っています。実は選挙戦の最中の6月27日にこの会議を行うため、かねて都の政策企画局が準備を進めていました。しかし、この日は選挙期間では貴重な最初で最後の日曜日。そんな大事な日に会議を入れるとは、小池さんはもともと選挙応援するつもりがなかったのだろうと都庁内では囁かれていたんです」

 都の幹部に訊くと、

「その日に勉強会の予定はありませんでした」

 と煙に巻くのだが、選挙直前になっても小池知事が都民ファへの支援を明言しなかったことも確かである。それを自民党の二階俊博幹事長との関係性から解説するのは政治部デスク。

「実は、6月に入って小池さんは二階さんとの間で自民党と都民ファを分け隔てなく応援する、という内々の合意をしているのです」

 二階幹事長と蜜月関係を維持している小池知事。これには理由があった。

「1月の千代田区長選では、小池さんが街頭で都民ファ候補のための演説をしないという密約が自民党と交わされていました。しかし、接戦となった選挙の最終日に小池さんは街頭演説を行い、二階さんの側近である幹事長代理の林幹雄(もとお)さんは怒り心頭。後日、小池さんは党本部に出向き、二階さんに謝罪するという一幕がありました。それで今回、小池さんは当初から都民ファに肩入れできず、自民党との選挙協力も模索していました。二階さんの仲介で自民党候補と小池さんの2連ポスターを作ることも検討された。しかし、さすがに小池さんも都民ファに顔向けできないと、雲散霧消してしまいました」(同)

 挙げ句の果ての入院劇。小池知事の過去を振り返っても、形勢が不利になった時の“敵前逃亡”は繰り返されてきた。

劇的な“復活”は…

 例えば、2007年。第1次安倍政権下で初の女性防衛大臣になった小池氏は“防衛省の天皇”と言われ、対立していた守屋武昌事務次官のクビを独断で切り、官邸との関係が悪化すると、「やめる」と宣言。在任わずか55日での退任となった。

 また、4年前に希望の党の代表として挑んだ衆院選では劣勢が伝えられ、投開票日に公務としてパリに“逃亡”。選挙後には党の代表を辞任し、周囲を呆れさせた。今回の雲隠れはさもありなん、なのだ。

『女帝 小池百合子』(文藝春秋)で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞したノンフィクション作家の石井妙子氏が指摘する。

「防衛大臣の時も、希望の党代表の時も、彼女は自身の状況が厳しくなってくるとバッサリと周囲を切り捨ててしまう。自身が生き残ることを第一に考えるのだと思います。今回の都議選では都民ファーストを見捨てたと思われても仕方ない中で、結果として、入院したことにより、批判されることを回避できました。いかにも小池さんらしい振る舞いだと言われれば、その通りだと思います」

 今回の都議選では小池知事の側近である荒木代表が自身の中野区選挙区で当落スレスレの戦いを続けている。そのため、最終盤で劇的な“復活”を遂げるのでは、とも言われていた。本当の狙いは何か。

 先のデスクによれば、

「五輪が終われば、都知事の椅子に魅力はなくなります。国政進出といっても、二階幹事長を除き、官邸幹部や自民党執行部が小池さんを受け入れる様子はありません。すると、都議選で自公の過半数を阻止した上で当面は議会でいかにうまく立ち回るかを考えなくてはならない。議案に対し自公の要求を呑んで、都議会自民党との関係を徐々に修復していきながら、国政復帰を窺うのが現実的です」

 二階幹事長にとっても好都合だという。

「二階さんも幹事長の座を追われたり、菅総理との関係が悪化した時に小池さんは使えるカードとして保持しておきたい。女性初の総理・総裁候補としてチラつかせることができますから」

 その二階氏に対しては、

「小池さんは二階さんとのパイプをみせつけるため、頻繁に二階さんに面会要請をしています。当の二階さんはタイミングを周到に計って都合の悪い時は会わないようにしています」(同)

 利用し、利用される「政治屋」の暗闘。政治アナリストの伊藤惇夫氏が言う。

「彼女が“都知事では終わりたくない”と考えているのは確かです。都議選では入院中の小池さんに同情が集まり、図らずも都民ファに勢いが出てきた。ベッドの上で“次の一手”を探っていたところでしょう」

 敵前逃亡したまま小池劇場の幕は上がらないのか。

 観客は独特の緊張感の中で彼女の一挙手一投足を見つめている。

週刊新潮 2021年7月8日号掲載

特集「断末魔『都民ファ』は見捨てられるのか 国政復帰したい『小池百合子知事』長期入院でまたも敵前逃亡」より

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